The Who
Won’t Get Fooled Again (1971)
ザ・フーの5枚目のアルバム『フーズ・ネクスト』のラストを飾る曲だ。
デビュー以来一貫してケンカ腰のザ・フーは、しかしその知性とユーモアによって、攻撃的だけれどポジティヴで斬新な楽曲を創造し続けた。この曲もまた、そんな彼らを象徴するような代表曲だ。
原題の「Won’t Get Fooled Again」は「もう二度とダマされないぞ!」という意味らしい。
みんなが通りに出て闘い
旗を振る扇動者が、古い権力者たちを追い出す
そして今度は旗を振ってた連中が
反対する人々を裁判にかけて判決を下すんだ
ショットガンが火を噴く音が、歌のように聴こえてくる新しい体制には敬意を表するよ
革命の成功を祝う声も聞こえる
おれはそれを笑顔で眺めながら
昨日と同じようにギターを弾くんだ
そしておれはこう心に誓うんだ
もう二度とダマされないぞって
(written by Pete Townshend)
この曲について作者のピート・タウンゼントはこう言っている。
「革命について異を唱えている歌だ。革命なんて長い目で見ればただの革命にすぎず、多くの人が傷つくだけだ」
71年なんて、沈静化したとはいえ学生運動や革命思想の空気はまだ残っている時代に、つねに反体制でなければならないと暗黙のうちに決めつけられているロックバンドの代表格がこれを言うのはなかなか勇気がいったんじゃないかと思う。実際「最も保守的なロック・ソング」と揶揄されたり、批判されたりもしたようだ。
でも今なら多くの人が共感するのは間違いないだろう。
国民を虐げたり自由を奪ったりするような体制は倒されたほうがいいにきまってるけど、倒した指導者が今度は体制の維持のために反対派を排除していくのも、もう革命あるあるみたいな歴史的事実だ。
この、人が人を支配するための醜い争いの繰り返しに、心底虚しい気持ちになり、「二度と信じるものか!」とザ・フーは歌っている。
国境がなくなって世界中がひとつになるユートピアを空想するのもいいけど、ザ・フーはいつだって現実にストリート立つ人々の側に立って、世界の不条理や冷酷さや虚しさと闘う歌を歌っていたのだ。
(Goro)