ザ・フー『フーズ・ネクスト』(1971)【最強ロック名盤500】#167

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【最強ロック名盤500】#167
The Who
“Who’s Next” (1971)

1971年8月にリリースされたザ・フーの5枚目のアルバムだ。

わたしがあまり好きではない前作『トミー』の高評価と商業的成功に気をよくしたピート・タウンゼントは、ロック・オペラ第二弾『ライフハウス』の制作を進めていた。

これは「聴衆参加型ロック」という壮大なプロジェクトだったらしいが、ピートの書いた脚本のあまりの難解さやそのプロジェクトの規模に、マネージャーもメンバーも反対し、計画は頓挫した。

本作はピートが『ライフハウス』のために書き溜めた楽曲から8曲を選び、ジョン・エントウィッスル作の「マイ・ワイフ」も含めた9曲が収録された。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 ババ・オライリィ
2 バーゲン
3 ラヴ・エイント・フォー・キーピング
4 マイ・ワイフ
5 ソング・イズ・オーヴァー

SIDE B

1 ゲッティング・イン・チューン
2 ゴーイング・モービル
3 ビハインド・ブルー・アイズ
4 無法の世界

A1「ババ・オライリィ」とB4「無法の世界」はザ・フーの代表曲に数えられる名曲だが、その他の楽曲も充実している。最初から最後まで飽きさせることがない。

「ババ・オライリィ」とはまた変てこなタイトルだけれども、ピートが当時心酔していたインドの導師ミハー・ババと現代音楽の作曲家テリー・ライリーを合わせたタイトルだということらしい。

なにかそのババさんのプロフィールをシンセサイザーに入力して音のパターンを作り出したものが冒頭のループ状のイントロで、それに合わせて演奏されているのだけど、まあ実験的と言えば聞こえはいいけれども実際そんなお遊びみたいなことでよくこんな名曲が生まれたものだと思う。

60年代のザ・フーに比べるとサウンドも整理されて聴きやすくなり、ハード・ロックやプログレの方向に変わりつつある頃だけど、「十代なんてクソつまんねえ!(teenage wasteland!)」なんて憤りを顕わにするのはマイ・ジェネレーションの頃からちっとも変わっていないし、凡百のプログレやハード・ロック・バンドからは、こんな躍動感のある青春の雄叫びみたいな音楽は生まれてこないだろう。

しかし、「このアルバムのクオリティなら、いったい『ライフハウス』はどんな大傑作になっていただろう!」とはわたしは思わない。

『トミー』がちっとも良いと思えないわたしは、『ライフハウス』が頓挫して良かったと思っている。おかげでこんな名盤が生まれたし、わけのわからないロック・オペラを量産する変なバンドにザ・フーがならなくて本当に良かったと思う。

アルバムはザ・フーにとって初の全英1位、そして全米4位という『トミー』を上回る大ヒットとなった。

↓ アルバム冒頭を飾る「ババ・オライリィ」の78年の公式ライヴ映像。ピート先生の迫力のダンス、ジャンプ、キック、そしてタンバリンへのフックにアッパーカットをご堪能あれ。

↓ 同じく78年のライヴで「無法の世界」。こちらもヴォーカリストよりも目立つギタリストが縦に横にと躍動する。

(Goro)

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