⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
The Who
“My Generation” (1965)
ビートルズは1stアルバムのジャケットで、EMI本社の階上からニッコリと笑顔でカメラを見下ろした。
そしてその真逆のように、ドラム缶横の薄汚れた場所から険しい表情でカメラを見上げるザ・フー。1965年12月に英国でリリースされた1stアルバム『マイ・ジェネレーション』のジャケット写真だ。彼らの登場は革命的だった。
ビートルズが愛だの恋だのを歌うモテ系陽キャ男子たちの代弁者なら、ザ・フーは孤独と疎外感とフラストレーションで今にも暴発しそうな非モテ系陰キャ男子の代弁者だった。
ザ・フーは、大人たちの古い価値観に抵抗し、若い世代のナマの声を、暴力的な荒っぽい演奏と、耳をつんざくフィードバックノイズ、フレッシュなメロディに瑞々しいコーラス、そして若者らしい遊び心とユーモアで表現した。
その意味で本作は、英国パンクの源流と言えるだろう。
本作はオリジナル曲が9曲、カバーが3曲という構成になっている。プロデューサーはキンクスの1stのプロデュースも務めたシェル・タルミーだ。カッコ内はカバー元のアーティスト。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 アウト・イン・ザ・ストリート
2 アイ・ドント・マインド(ジェームス・ブラウン)
3 ザ・グッズ・ゴーン
4 ラ・ラ・ラ・ライズ
5 マッチ・トゥー・マッチ
6 マイ・ジェネレイション
SIDE B
1 キッズ・アー・オールライト
2 プリーズ・プリーズ・プリーズ(ジェームス・ブラウン)
3 イッツ・ノット・トゥルー
4 アイム・ア・マン(ボ・ディドリー)
5 ア・リーガル・マター
6 ジ・オックス
全英2位の大ヒットとなったA6「マイ・ジェネレーション」は、ザ・フーの代表曲であり、この曲こそが史上初のパンクロック・アンセムと言える。
大人たちや社会への不満を、吃音でうまく言えないけれども、それでも必死で叫ぶ。
ザ・フーの描く若者はいつもそうだけど、ヒーローのような代弁者ではなく、コミュ障みたいな、既存の社会の一員になることに抵抗を感じている、いつの時代にもいる悩める若者なのだ。
B1「キッズ・アー・オールライト」も、A6に勝るとも劣らない名曲だ。
孤独や不安を吹き飛ばすような、確信に満ちた肯定感、明るい輝きと美しさに満ちている。大好きな曲だ。
他にも、A1「アウト・イン・ザ・ストリート」やA5「ラ・ラ・ラ・ライズ」、A5「マッチ・トゥ・マッチ」、B11「リーガル・マター」といったオリジナル曲はどれも、心躍るような若者らしい瑞々しさにあふれている。
最後を締めくくるインストのB6「ジ・オックス」は、ロック史上初めて、フィードバック・ノイズを録音した楽曲と言われている。白煙でも上がりそうぐらいのヘヴィなサウンドは、その後のロックを予言するようでもある。
そんな新鮮なオリジナル曲に比べると、途中に挿入された3曲のR&Bのカバーは、悪い演奏ではないものの、カバーを収録すること自体がすでに時代遅れにすら感じられるほどだ。
そしてまた、「愛だの恋だの」を能天気に歌っていられる時代も終わった。
1965年の終わりとともに、カバーの時代は終わり、愛だの恋だのの時代も終わり、ロックは自分の言葉で、よりリアリティのある歌を歌う時代へと、ステージが移行したのだった。
ザ・フーのオリジナル曲を書いたバンドのギタリスト、ピート・タウンゼントはこの当時たったの20歳だった。
大人たちはさぞかしビビったことだろう。
まさに「恐るべき子供たち」の登場だった。
↓ 全英2位の大ヒットとなったザ・フーの代表曲であり、永遠のロック・アンセム「マイ・ジェネレーション」
↓ ザ・フーの瑞々しい音楽性を象徴するもうひとつの代表曲「キッズ・アー・オールライト」。
(Goro)