⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
The Velvet Underground
“The Velvet Underground & Nico” (1967)
1967年、西海岸ではサンフランシスコの太陽の下、10万人ものヒッピーの若者たちが各地から集い、最新のロックやドラッグ、自由恋愛や共同生活を楽しむ〈サマー・オブ・ラヴ〉と呼ばれる現象が巻き起こっていた。
一方その頃、東海岸のニューヨークでは、暗い、光の射さない世界で、ロックに地下世界を増設しようとする不穏分子たちの活動が始まっていた。
ルー・リード率いる、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドである。
アンディ・ウォーホルのプロデュースにより、彼らはそれまでのどんなロックとも違う、ダークで不道徳で聴きにくい、異様なアルバムでデビューした。
デヴィッド・ボウイはこのアルバムを聴いたとき、「聴く人のことをまったく考えていない、自分がやりたいことだけをひたすらやっていることに衝撃を受けた」と語っている。
このアルバムはそれまでのメインストリームのロックとはまったく違う、異形の姿をしていた。
それは、記念すべき史上初の〈オルタナティヴ・ロック〉だった。
それまでワンフロアだった〈ロック〉という音楽に新たに地下フロアができたのである。ロックの増床である。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドはその地下フロアの最初のテナントだった。
わたしは青春時代にロックに地下フロアが存在することに気づいて以来、もっぱら1Fを素通りしてB1〈オルタナティヴ・フロア〉へと階段を下っていく癖がついてしまった。だからこのフロアのことはまあまあ知っている。
本作は、発売当初は全米アルバムチャートの171位が最高位と、ほとんど売れなかったようだが、今ではロック史に最も大きな影響を与えた、最重要名盤として定着している。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 日曜の朝
2 僕は待ち人
3 宿命の女
4 毛皮のヴィーナス
5 ラン・ラン・ラン
6 オール・トゥモローズ・パーティーズ
SIDE B
1 ヘロイン
2 もう一度彼女が行くところ
3 ユア・ミラー
4 黒い天使の死の歌
5 ヨーロピアン・サン
ニコがヴォーカルをとっているのはA3「宿命の女」、A6「オール・トゥモローズ・パーティーズ」、B3「ユア・ミラー」の3曲である。ウォーホルのゴリ押しで歌わせたという説もあるが、しかし結果的に、上手くはないがこの独特の無表情・無感動な歌声は、このアルバムをより異様かつクールな印象にするのに大いに役立っている。
初めて聴く人には、B1「ヘロイン」やB4「黒い天使の歌」、B5「ヨーロピアン・サン」など聴きにくい曲も多く、全然良く思えなくても仕方がないし、本作の良さがわからないといって戸惑う必要もない。
特別に優れた音楽というわけでもないし、上手くもないし、高度に芸術的と言うわけでもないのだ。
正直、このアルバムの素晴らしいところはと訊かれても、シンプルなメロディと、猥雑なサウンド、あとはその独特の「雰囲気」や「味」としか言いようがない。
ただただ好みの問題だけであり、多数決ではきっと負ける。
オルタナティヴ・ロックというものはそもそも少数派が好んで聴く、一風変わった音楽というほかないのだ。
実のところ、わたしも最初はよくわからなかったが、繰り返し聴くうちにだんだんとその独特の世界の沼にハマっていったのだ。
とりあえず繰り返し聴いてみる、ということで新しい世界が開ける場合もあるのである。
↓ ルー・リードがリード・ヴォーカルを取るヴェルヴェッツの代表曲「僕は待ち人」。
↓ ニコがリード・ヴォーカルをとる「宿命の女」。
(Goro)
[amazonjs asin=”B00599UGV0″ locale=”JP” title=”ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ”]
[amazonjs asin=”B009AXXGVI” locale=”JP” title=”Velvet Underground.. -Hq- 12 inch Analog”]