英スコットランド出身のザ・ヴァセリンズは、ユージン・ケリーとフランシス・マッキーのデュオとして結成された。2人ともヴォーカル&ギターである。
1987年にデビューし、EPを2枚とアルバムを1枚リリースしたが商業的な成功は得られず、1990年に解散した。
ところが解散の翌年の1991年、ニルヴァーナが英BBCラジオの番組《ジョン・ピール・セッション》に出演した際にヴァセリンズのカバーを2曲披露し、それが1992年発売のニルヴァーナの編集盤『インセスティサイド(Incesticide)』に収録されると一気にその名が注目を集めた。わたしもそれを聴いてすぐにヴァセリンズのCDを買いに走ったものだ。
ヴァセリンズは、ノイジーなギターなどオルタナ系のアプローチをしながらも、まるで子供向けの歌みたいに単純でポップなメロディというアンマッチな作風が独特の魅力を放っている。
この「オルタナとポップのアンマッチな融合」という、ミート・パペッツやピクシーズにも通じる方法論はそのままニルヴァーナが引き継ぎ、完成を極めたのだった。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきヴァセリンズの名曲5選です。
Son of a Gun
ヴァセリンズの3曲入りデビューEPのタイトル曲。ノイジーなギターのオルタナサウンドからスタートして、ユージンのローテンションのヴォーカル、フランシスの素朴な田舎娘のお誕生日会みたいな歌声のリフレインと、デビュー曲にしてすでにヴァセリンズの完成形とも言える代表曲だ。ニルヴァーナが《ジョン・ピール・セッション》でカバーした。
Molly’s Lips
英インディチャートで11位まで上がった2枚目の4曲入りEP『ダイイング・フォー・イット(Dying For It)』に収録された曲。これもニルヴァーナが《ジョン・ピール・セッション》でカバーしている。
Jesus Wants Me for a Sunbeam
同じく2ndEP『ダイイング・フォー・イット』に収録された曲で、ニルヴァーナが『MTVアンプラグド』でカバーしたことで有名になった曲だ。ヴァセリンズではわたしはこの曲がいちばん好きだ。
ユージンが書いた曲だが、もともと同じタイトルの子供向けの讃美歌があり、歌詞の内容はそのパロディになっているのだそうな。
Eugenius – Breakfast
番外編というべきかもしれないが、ヴァセリンズ解散後、再評価の機運が高まる中でユージン・ケリーが新たに結成した、ユージニアスというバンドの1992年発表の1stアルバム『ウーマラマ(Oomalama)』収録曲。当時のグランジ・ブームに乗っかったサウンドで、この曲はわたしのお気に入りだった。しかしやはり商業的成功は得られず、1998年に解散した。
Sex with an X
2008年にユージン・ケリーとフランシス・マッキーを中心に5人組となって再結成したヴァセリンズがサブ・ポップからリリースした、20年振りとなる2ndアルバムのタイトル曲。
音こそ多少クリアになったものの音楽性は20年前とほぼ変わらず、ポップでキュートでちょっぴり毒のある、あのヴァセリンズのままだった。
ヴァセリンズのアルバムを最初に聴くなら、『ザ・ウェイ・オブ・ザ・ヴァセリンズ:コンプリート・ヒストリー(The Way of the Vaselines: A Complete History)』がお薦め。第一期ヴァセリンズのEPとアルバムのすべてを収録したアルバムで、これ一択だろう。
2009年に発売された『エンター・ザ・ヴァセリンズ(Enter the Vaselines)』もまったく同じ内容で、もう1枚、デモ音源などが収録されたCDが付いている。
(Goro)


