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The Style Council
“Our Favourite Shop” (1985)
前作『カフェ・ブリュ』は、「ジャムを解散して新しいバンドでやりたかったこと」を一例ずつ挙げてわかりやすく説明したようなアルバムであった。
ソウル、ファンク、ジャズ、ボサノヴァ、フレンチ・ポップス、ラテン、ヒップ・ホップなどなど、だから曲調もバラバラで「試しにやってみた」感が強い、それが実験的でもあり、行き当たりばったりのリアリティと、とっ散らかったところが逆に魅力的なアルバムだった。
しかし2ndアルバムである本作は、前作で試してみた数々の実験の成果を踏まえて、スタイル・カウンシルとしてのオリジナルな作風を確立した作品となった。
今回もソウルやジャズ、ラテン、ファンクなど、音楽的要素は多岐に渡りながらも、サウンドには統一感があり、前作のようなとっ散らかった感じはまったく無い。そして演奏は力強く、確信に満ちている。
言わば前作『カフェ・ブリュ』が、バラエティに富んだ料理を出す、お洒落だけど敷居は低い、大衆レストランと言った感じだとするなら、本作は、静かな住宅地の中ほどでひっそりと営業する、こだわりの強い創作料理を出す高級店の趣である。
本作は1985年6月にリリースされ、全英アルバム・チャートの1位に輝いた。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ホームブレイカー
2 オール・ゴーン・アウェイ
3 カム・トゥ・ミルトン・キーンズ
4 インターナショナリスツ
5 ストーンズ・スロー・アウェイ
6 スタンド・アップ・コミックス・インストラクションズ
7 ボーイ・フー・クライド・ウルフ
SIDE B
1 マン・オブ・グレイト・プロミス
2 ダウン・イン・ザ・セーヌ
3 ロジャース
4 ラック
5 エヴリシング・トゥ・ルーズ
6 アワ・フェイヴァリット・ショップ
7 タンブリング・ダウン
B7「タンブリング・ダウン」はシングル・カットされ、全英6位のヒットとなった。この曲はジャムの頃の作風にも似た、ストレートでパワフルな曲だ。結局わたしもスタカンではこの曲がいちばん好きかもしれない。
サウンド的には実験性が影を潜めた印象はあるけれども、しかし相変わらず歌詞はシリアスかつ攻撃的である。
サッチャー政権下の失業問題、過剰な消費社会、労働者階級の貧困、南アフリカのアパルトヘイト、ドラッグの過剰摂取で亡くなった友人への弔歌など、シリアスな歌詞を、オシャレでダンサンブルな音楽に乗せて歌うという「実験性」は保持されたままだ。
まあしかしその辺りは実際、英語の苦手なわたしには、まあそれほどピンとは来ていないのだけれども。
↓ 全英6位のヒットとなった「タンブリング・ダウン」。コーラスを務める美しい女性、D・C・リーはこの2年後にポール・ウェラーと結婚することになる。
↓ 全英13位のヒットとなった「ロジャース」。失業や住宅問題など、サッチャー政権下の社会的格差につしいて皮肉とユーモアを交えた歌詞を、ダンサンブルなビートとソウルフルなコーラスに乗せて歌っている。MVでは、ポール・ウェラーの似合わない演技とダンスがお茶目だ。
(Goro)
コメント
お洒落感、ここに極まった感じですよね(笑)。
タンブリング・ダウンのPVにおける、ウェラー師匠の花形満的なヘアスタイルもなかなか・・・
楽曲は本当に粒がそろっていて、2度目の絶頂期を思わせますが、この後表面的なモデルチェンジに陥っていくんですよね~。ただし、その失敗を経たからこそ、本質的な表現を模索していくスタイルを確立していったのでしょうが。
このアルバムでは、僕はエヴリシング・トゥ・ルーズが一番好きです。