I Wanna Be Adored (1989)
これももう、35年も前の曲なのか。
嫌になるな。
嫌になるのは、いつのまにかわたしもそんなに年を取ったんだな、というおそろしく実感が無い事実に戸惑うことと、35年が経ってもこの彼らの1stアルバム『石と薔薇』を聴けば、相も変わらぬ清々しい感動を覚えてしまう、という自分の成長しなさ加減を再認識させられてしまうからなのかもしれない。
しかしやっぱり、今聴いても『石と薔薇』は素晴らしい。
奇を衒わず、カッコつけすぎず、ポップであり、ロックであり、うるさすぎず、甘すぎず、超一級のアートのように深みのある美がある。
「憧れられたい」はそのアルバムの冒頭を飾る、彼らの代表曲だ。
凄腕ドラマーのレニとベースのマニを中心としたグルーヴが素晴らしく、ジョン・スクワイアのギターがまたカッコいい。あのモンキー風のヴォーカルだけがやけに素人くさいのはご愛敬だ。ヴォーカルまで完璧だったらもうオルタナではなくなってしまう。
英国の工業都市マンチェスターのクラブ・カルチャーから生まれた、ロックとアシッド・ハウスの融合という斬新な試みは、「マッドチェスター」などと呼ばれるムーヴメントとなり、英国ロックの復活のきっかけとなった。緩やかなダンスビートと60年代のサイケデリック・ロックの融合のようなこの楽曲は、英国ロックの復活を高らかに宣言するような、まさに新しい時代の到来を告げるファンファーレのようだった。