80年代英インディー・ロックの草分け 〜ザ・ソフト・ボーイズ『アンダーウォーター・ムーンライト』(1980)【最強ロック名盤500】#284

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【最強ロック名盤500】#284
The Soft Boys
“Underwater Moonlight” (1980)

聴いた瞬間に懐かしさが込み上げてきて、思わずニヤリとしてしまった。

と言っても今回初めて聴いたのだけれども、このギターの音、メロディの感じ、サウンドの質感、そのすべてが、わが青春時代の懐かしき「80年代英国インディー・ロック」そのものだったからだ。

この【500】を書きながら70年代のロックをずっと聴いてきて、パンクを経て、ポスト・パンク、ニュー・ウェイヴの辺りまで来たところだけれども、本作を聴いて、そうか、ここからいわゆる「80年代英国インディー・ロック」というものが始まったんだなあというのを初めて知った。もう、聴いた瞬間にわかった。

ザ・ソフト・ボーイズは、ヴォーカル&ギター&ソングライターを担当するロビン・ヒッチコックが中心となって1976年にロンドンで結成された4人組のバンドだ。

本作は1980年6月にリリースされた2ndアルバムだ。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 I Wanna Destroy You
2 Kingdom Of Love
3 Positive Vibrations
4 I Got The Hots
5 Insanely Jealous

SIDE B

1 Tonight
2 You Have Got To Go Sideways
3 Old Pervert
4 The Queen Of Eyes
5 Underwater Moonlight

ロビン・ヒッチコックは後期ビートルズとシド・バレットに影響を受けたと語っているように、サイケでポップな楽曲を、チャリチャリ・キラキラしたツインギターとパンクのエネルギーであっけらかんとぶちかましてくる。

まさに80年代の英ネオ・サイケの源流であり、R.E.M.のギタリスト、ピーター・バックやザ・スミスのジョニー・マー、レディオヘッドのトム・ヨークなども影響を受けたことを公言している。

ポスト・パンクの時代というのは、「今さら普通のロックなんてもう出来ない」みたいな固い空気の中で、ちょっと難しい顔をしたシリアスなバンドが多いイメージだけれども、そんな中でソフト・ボーイズは柔軟に、全体にブラック・ユーモアみたいな感覚で、軽快に突き抜けたような朗らかさや爽快感を感じる。

だからソフト・ボーイズっていうのかな。

今から思えば、80年代英国インディー・ロックの楚となった重要作なのだが、しかし当時はまったく売れず、バンドはこの数ヶ月後に解散してしまった。

↓ 彼らの代表曲と言える「I Wanna Destroy You」。恐るべきタイトルだが、その標的にされているのは当時のサッチャー政権とメディアらしい。

↓ ザ・ソフト・ボーイズを象徴するような、サイケでポップな名曲「Underwater Moonlight」。

(Goro)