ストーンズのカバー原曲を全発掘!【vol.6】Find Original The Rolling Stones Cover Songs

ベスト・オブ・リトル・ウォルター+3

ザ・ローリング・ストーンズはもともと、米国のブルース・R&Bのカバー・バンドとして結成されたバンドだった。英国の白人の若者が米国の黒人音楽を演奏するということは当時としては画期的な試みであり、それがすなわちブリティッシュ・ロック誕生の原点となったのだ。

ストーンズがカバーしたその原曲を聴いてみるという、ロック史の原初へと遡る旅は、ルーツ・ミュージック入門にも最適と言えるし、実際わたしもそうやってその奥深い世界を知り、魅了されていったのだった。

このシリーズでは、そんなオリジナル曲を発掘し、ストーンズが録音した年代順に紹介している。

今回はその第6回目で、1980年代以降に主にライヴなどでストーンズがカバーした、その原曲を発掘してみた。

エディ・コクラン
トゥエンティ・フライト・ロック (1957)
Eddie Cochran – Twenty Flight Rock

1950年代のロックンロール・オリジネイターの一人で、21歳の若さで交通事故死という悲劇的な運命を辿った、エディ・コクラン(1938-60)が1957年11月にリリースしたシングル。

1956年のアメリカ映画『女はそれを我慢できない』の劇中で、まだ売れる前のコクランが出演してこの曲を演奏するシーンがあり、これをきっかけに彼はリバティ・レコードと契約することになった。当時、コクランは17歳だった。

ストーンズは81年の全米ツアーでこの曲のカバーを披露。82年発表のライヴ・アルバム『スティル・ライフ』に収録された。

Twenty Flight Rock (Remastered)

ザ・ミラクルズ
ゴーイング・トゥ・ア・ゴー・ゴー (1965)
The Miracles – Going to a Go-Go

シンガー兼ソングライターとして初期モータウンの屋台骨を支えたスモーキー・ロビンソン (1940- ) が率いるザ・ミラクルズが1965年12月にリリースしたシングル。全米11位のヒットとなり、このヒットをきっかけに〈ゴー・ゴー・クラブ〉という形態のダンスホールが世界的な流行へと拡がっていった。

ストーンズ版は82年発表のライヴ・アルバム『スティル・ライフ』に収録されている。

Going To A Go-Go

ビッグ・ボッパー
シャンティリー・レース (1958)
Big Bopper – Shantilly Lace

米テキサス州出身のロックンロール・オリジネイターの一人、ビッグ・ボッパー (1930-59) の、全米6位の大ヒットとなった代表曲。1959年2月3日、バディ・ホリー、リッチー・ヴァレンスと共に搭乗した飛行機が墜落し、28歳で世を去った。

ストーンズ版は、2021年にリリースされた『刺青の男』の40周年記念版のスーパー・デラックス・エディションのボーナスディスク『スティル・ライフ(ウェンブリー・スタジアム1982)』にライヴ録音で収録されている。

Chantilly Lace

ボブ・アンド・アール
ハーレム・シャッフル (1963)
Bob and Earl – Harlem Shuffle

ロサンゼルス出身のソウル・デュオ、ボブ・アンド・アールの63年のヒット曲。全米44位、全英7位のヒットとなった。サム&デイヴなんかもそうだが、60年代はこういう男性二人のソウル・デュオが流行した時期があったのだ。

ストーンズ版は1986年発表のアルバム『ダーティ・ワーク』に収録され、第一弾シングルとしてもリリースされている。全米5位、全英13位のヒットとなった。

Harlem Shuffle

ハーフ・パイント
ウィンサム (1984)
Half Pint – Winsome

ジャマイカのレゲエ・ミュージシャン、ハーフ・パイント (1961- ) が1984年に発表したシングル。ジャマイカでナンバーワン・ヒットとなった。

ストーンズ版は『ダーティ・ワーク』に「トゥー・ルード」のタイトルで収録され、キース・リチャーズがリード・ヴォーカルを取っている。

Winsome

ボブ・ディラン
ライク・ア・ローリング・ストーン (1965)
Bob Dylan – Like a Rolling Stone

言わずと知れたボブ・ディラン (1941- ) の、全米2位の大ヒットとなった代表曲。ロックンロールからロックへと、新しい時代の到来を告げた革新的な名曲だった。

ストーンズ版は1995年に発表した『ストリップド』にライヴ録音で収録されている。

Like a Rolling Stone

リトル・ウォルター
マイ・ベイブ (1954)
Little Walter – My Babe

マディ・ウォーターズ・バンドの天才ブルース・ハープ奏者として一躍名を馳せたルイジアナ州出身のリトル・ウォルター (1930-68) は、バンド卒業後ソロとして活動すると、シングル・ヒットを連発した。この曲はチェス・レコードの屋台骨を支えたソングライター、ウィリー・ディクソンが書いた曲で、1954年にリトル・ウォルターがシングルとして発表すると、米R&Bチャートの2位まで上がるヒットとなった。

ストーンズ版は「リトル・ベイビー」のタイトルで『ストリップド』に収録されている。

My Babe

k.d.ラング
コンスタント・クレイヴィング (1992)
k.d. lang – Constant Craving

カナダ出身の女性シンガー・ソングライター、k.d.ラング (1961- ) が1992年に発表したシングルで、カナダのシングル・チャートで8位、米アダルト・コンテンポラリー・チャートで第2位を獲得するヒットとなった代表曲。

ストーンズはこの曲をカバーしたわけではない。

しかし、97年発表のアルバム『ブリッジス・トゥ・バビロン』からシングル・カットされた「エニバディ・シーン・マイ・ベイビー?」のサビ部分がこの曲によく似ているということで、訴訟問題を避けるため、ソングライターのクレジットにk.d.ラングも加えることになった。この2曲の類似は、レコーディング中にキースの娘とその友人が気づいたという。当のk.d.ラングは「こんなに光栄なことはない」とコメントしている。

k.d. lang – Constant Craving (Official Video, 4K HD Remaster)

グレン・ミラー楽団
あなたのそばに (1940)
Glenn Miller Orchestra – The Nearness of You

米アイオワ州出身の、スウィング・ジャズの時代を代表するバンドリーダー、グレン・ミラー (1904-44) が、レイ・エバールをヴォーカルに迎えて楽団と1940年に録音した曲で、全米5位の大ヒットとなった。その後もスタンダード・ソングとして多くの歌手に歌い継がれている。

ストーンズ版は2004年発表のライヴ・アルバム『ライヴ・リックス』に、キース・リチャーズのヴォーカルによる「ザ・ニアーネス・オブ・ユー」のタイトルで収録されている。

The Nearness of You

B.B. キング
ロック・ミー・ベイビー(1964)
B.B. King – Rock Me Baby

ミシシッピ州出身のブルース界のスーパースター、B.B. キング (1925-2015) が1964年にリリースしたシングルで、全米34位まで上昇した代表曲のひとつ。多くのアーティストによってカバーされ、ブルース・ロックのスタンダードとなっている。

ストーンズ版は2004年発表のライヴ・アルバム『ライヴ・リックス』に収録されている。ストーンズがB.B.キングをカバーするのはめずらしく、この1曲だけだと思われる。

Rock Me Baby

レイ・チャールズ
ザ・ライト・タイム (1958)
Ray Charles – The Right Time

1957年にR&Bシンガー、ナッピー・ブラウン (1929-2008) によって最初に録音されたもののヒットせず、翌年にレイ・チャールズ (1930-2004) がカバーしてシングル・リリースすると米R&Bチャート5位のヒットとなった。その後もジェームズ・ブラウンなど多くのアーティストがカバーしている。

ストーンズ版は2021年にリリースされたライヴ『ア・ビガー・バン・ライヴ・オン・コパカバーナ・ビーチ』に収録されている。

The Right Time

以上、11曲でした。

ストーンズ版の方が気になる方はYouTubeで検索してみてください。ほぼすべて公式にアップされているはずです。

次回はこのシリーズの最終回となります、vol.7にご期待ください。

(Goro)