The Rolling Stones
1964年8月に、ストーンズは5曲入りEP『ファイヴ・バイ・ファイヴ』をリリースした。「5人で5曲」という意味のタイトルだ。
SIDE-A
1. イフ・ユー・ニード・ミー(ウィルソン・ピケットのカバー)
2. エンプティー・ハート(ナンカー・フェルジ)
3. 南ミシガン通り2120(ナンカー・フェルジ)
SIDE-B
1. コンフェッシン・ザ・ブルース(リトル・ウォルターのカバー)
2. アラウンド・アンド・アラウンド(チャック・ベリーのカバー)
バンドのオリジナルであることを示す”ナンカー・フェルジ”名義の曲、インストの「南ミシガン通り2120」というタイトルは、ストーンズにとっての聖地である、マディ・ウォーターズ、チャック・ベリー、ハウリン・ウルフ、ボ・ディドリー、バディ・ガイ、リトル・ウォルター、ココ・テイラー、エタ・ジェームスなどなど、シカゴ・ブルースの錚々たる面々を排出した、チェス・レコード本社の住所だ。
6月のUSツアーでアメリカ初上陸を果たした際に訪問を実現し、シカゴ・ブルースの数々の名曲・名盤が録音された憧れのチェス・スタジオで、ストーンズは2日間で14曲を録音した。このEPに収録された5曲全てが、そのときに録音されたものだ。
A-1はウィルソン・ピケットの作で、彼のデビュー・シングルだ。同時期にソロモン・バークがカバーしてリリースし、結果的にはソロモン・バーク版のほうがヒットした。ストーンズが手本にしたのもソロモン・バークの方だろう。この時期ぐらいからストーンズには、こういったディープなサザン・ソウルのカバーが増えてくる。サム・クックとかオーティス・レディングとか。これがまたミックの声質やバンドのサウンドにも合っていて、良いカバーが多い。
B-1はピアニストのジェイ・マクシャンとヴォーカリストのウォルター・ブラウンによって書かれ、彼ら自身の演奏で1941年に大ヒットしたブルース・ナンバーだ。ストーンズが手本にしたのは58年に録音されたリトル・ウォルターのバージョン。
このEPの一番の聴き物はやはりB-2「アラウンド・アンド・アラウンド」だろう。演奏もカッコよく、この頃のストーンズはチャック・ベリーのカバーとなるとやたら生き生きとしているように感じる。
オリジナルの2曲はまあ、箸にも棒にもかからない、と言ったら言い過ぎかもしれないが、未だ発展途上曲だ。
どうしても、デビュー当時からオリジナル曲で爆売れしたビートルズと比べてしまうが、しかしここから、苦吟呻吟悪戦苦闘してだんだんとジャガー&リチャーズの作曲の腕前が上がっていく成長の軌跡こそが、この時期のストーンズの面白さでもあるのだ。それはやがてレノン&マッカートニーと肩を並べ、そして追い抜くのである(※個人の感想です)。
このEPをわたしは日本盤のLPサイズのレコードで持っていたけれど、なぜかオマケで、レコードプレーヤーの中心の突起に被せるための、小さなコンドームの形をした実にくだらないゴムのおもちゃが付いていたものだ。被せてたけど。
ストーンズはこの後さらにもう1枚EPを発表するが、全部で3枚のEPをまとめたものが2011年にリリースされた『60’s UK EPコレクション』だが、これは配信専用なのかな。全15曲入りですべてオリジナル・アルバム未収録なので、これもストーンズ・ファンとしては聴いておきたいところだ。
(Goro)