The Rolling Stones
SIDE-A サティスファクション(ジャガー/リチャーズ)
SIDE-B クモとハエ(ジャガー/リチャーズ)
戦後生まれの新しい世代の疎外感と欲求不満を代弁するような鮮烈な歌詞と、ロック史上最も有名なギターリフを持つこの曲は、1965年6月にリリースされ、全英1位はもちろん、初の全米1位にも輝き、世界中の国々でチャートの上位を席巻した。ストーンズがイギリスの一介のブルース/R&Bバンドから、世界的なモンスター・ロック・バンドへと変貌した瞬間だった。
この曲が生まれた経緯についてキース・リチャーズは、ロンドンの自室で、眠りと眠りの間に書いたと自伝で語っている。朝起きてカセットプレーヤーを巻き戻してみると、アコギを弾きながら大まかな曲想が録音されていたが、録音したことはまったく覚えていなかったという。
ミックが続きの歌詞を書いて曲は完成したが、二人は初めこの曲がそれほど良い出来だとは思わなかったという。その後、これをシングルとしてリリースするかどうかの話し合いで、ミックとキースは反対したものの、他のメンバーとマネージャー、プロデューサー、録音スタッフの全員が賛成したため、シングル化が決まった。
キースは、あのファズギターはホーンの代わりとして仮で録音したもので、後からホーンを入れるつもりだったと語っている。しかしUSツアーの移動中、カーラジオからこの曲が流れてきて、すでにレコードがリリースされていることを知ったという。
アンドルーがあのままで出しちまうとは夢にも思わなかった。最初は悔しかった。俺は多重録音したかったんだ。ところが十日間あちこち回ってるうちに、あの曲はアメリカ1位を獲得した! だから、つべこべ言う気はない。それに、教訓も得た。人はときに過剰に走る。何もかもが自分好みでいいわけじゃない。(『ライフ』キース・リチャーズ著 棚橋志行訳)
確かにこれまでのオリジナル曲とは一線を画す新しさがあるし、世界的にヒットしたのだからあれで正しかったのだろうけれども、しかしキースやミックが気に入っていなかったというのは、ストーンズファンならなんとなく理解できるのではないか。コアなストーンズファンでこの曲が一番好きだという人はたぶんいないのではないかと思う。わたしもそうだ。
このオリジナル・バージョンは今ひとつモッサリしているし、スピード感の点でも物足りなく思ってしまう。正直、その後のストーンズにはこれ以上の名曲がいくらでもある。
しかしこの曲も、81年のアメリカ・ツアーを収録したライヴ盤『スティル・ライフ』のバージョンでは、キレもスピード感もあって、いい感じに生まれ変わった。チャーリーも絶好調だ。わたしもこのバージョンは大好きだ。
下の動画はその81年USツアーの公式動画だが、曲の途中でファンがステージに乱入し、キースがそれをギターでぶん殴るという、世界中のストーンズ・ファンが愛してやまない動画である。
B面はカントリー・ブルース風のオリジナル曲だ。この曲を好きだと思ったことはわたしはあまりなかった。
しかし、30年後の1995年にリリースされた『ストリップド』に収録されたバージョンは、エレキからアコギに持ち替えられ、より雰囲気が出て、いい感じだ。わたしはこっちのバージョンのほうが好きだな。
ストーンズが60年代にリリースしたシングルはこの『シングル・コレクション:ザ・ロンドン・イヤーズ』で、年代順にA面・B面ともすべて聴くことができる。ストーンズ・ファン必携のアルバムだ。
(Goro)