The Rolling Stones
65年6月に英国でリリースされた『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』は、ストーンズにとって3枚目、そして最後となったEP盤であり、初のライヴ録音だ。(ちなみに「EP盤」とは、シングルレコードと同じサイズで、複数曲を収録したもの)
Side-A
1. We Want the Stones (観客)
2. Everybody Needs Somebody to Love(ソロモン・バーク)
3. Pain in My Heart(オーティス・レディング)
4. Route 66(ナット・キング・コール、チャック・ベリーなど)
Side-B
1. I’m Moving On(ハンク・スノー)
2. I’m Alright(ボ・ディドリー)
※カッコ内はオリジナル・パフォーマー。作者に非ず。作者を知りたい方はこちら。
A-1は観客による13秒ほどのトラック。続くA-2はソロモン・バークや後のブルース・ブラザーズで有名な曲だが、30秒ほど演奏してA-3へと繋げる。後日紹介するアイルランドでのライヴもそうだが、これがこの当時のライヴのオープニングのスタイルだったようだ。A-2はエンディングで再度フルで演奏される。
まあとにかく、クソやかましい。勢いに任せた荒っぽい演奏もそうだが、それをかき消そうとするような女子たちの悲鳴あるいは怒号にも似た歓声が凄い。まるでストーンズ対観客の音圧対決のような様相を呈している。どちらも負けていない、当時の熱に浮かされたような興奮状態が生々しく伝わってくる。その意味ではちょっと他では聴いたことのないライヴ盤であり、時代の空気の貴重な真空パックと言える。
わたしが好きなのはアメリカのカントリー歌手ハンク・スノーのカバー「アイム・ムーヴィン・オン」だ。オリジナルはアコースティックのカントリー・ソングだが、それを電気をビリビリさせながらフルパワーでぶっ飛ばした、勢いのある演奏が最高だ。
「アイム・オールライト」も同様の演奏だが、この曲はボ・ディドリーのカバーでありながら、なぜかわたしの持っているレコードのクレジットはストーンズのオリジナル「ナンカー・フェルジ」名義になっている。調べてみると日本版ウィキまでそうなっているが、なにかの間違いであろう。
このEPは米国では発売されていないが、日本ではLPサイズで発売された。そしてまたしてもコンドームのオモチャが付いてきた。馬鹿馬鹿しいが、せっかくなのでレコードプレーヤーの中心に被せていたものだ。
このライヴEPのリリースから1年半後にアメリカのみで同じく『got LIVE if you want it!』のタイトルで、12曲収録のLPが発売される。これはストーンズのメンバーの意に反したものだったらしいが、ここにはEP盤を上回る状態で熱狂的な時代の空気が保存されているのでまた別項で紹介しよう。
ストーンズは全部で3枚のEPをリリースしたが、これをまとめたものが2011年にリリースされた『60’s UK EPコレクション』だ。これは配信専用かな。全15曲入りですべてオリジナル・アルバム未収録なので、これもストーンズ・ファンとしては聴いておきたいところだ。
(Goro)