「スカーレット」(2020)
The Rolling Stones feat. Jimmy Page
2020年に『山羊の頭のスープ』は、CD3枚組の「デラックス・エディション」として再発売された。これはサブスクでも聴くことができる。
Disc1は本編、そしてDisc2はアウトテイク集で、その中で大きな話題となったのが、レッド・ツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジが参加している「スカーレット」だ。
正確には『山羊』のアウトテイクではなく、1974年10月に録音されたものだが、46年ぶりに発掘され、2020年7月22日にはシングルとしてもリリース、PVまで作られている(ペイジもストーンズも出てはいないが)。
ジミー・ペイジはこの曲について次のようにコメントを寄せている。
俺は1974年10月にリッチモンドのロニー・ウッドの家に招かれてセッションをした。キース・リチャーズとイアン・スチュアートが来ると言われていた。旧友と再会するいい機会になりそうだと思った。
そこにはキースと俺、ベースのリック・グレッチ、そして初対面のドラマーとエンジニアがいた。キースのギター・パートを中心にリフを作り始めた。キースが最初に弾き出したあと、俺は彼のギター・パートを中心にリフを作り、アレンジを補強していった。他のミュージシャンとの演奏もすぐに噛み合って、その日の夜には全員でテイクを成功させることができた。キースとの仕事は楽しかったよ。
(Web版Rolling Stone誌「ジミー・ペイジが語る、ローリング・ストーンズの共演秘話」)
参加したメンバーは以下のようになっている。
ミック・ジャガー(Vo,Acoustic Guitar)
キース・リチャーズ(Gt)
ジミー・ペイジ(Gt)
リック・グレッチ(Ba,Vo)
ブルース・ローランド(Dr)
イアン・スチュワート(Piano)
実はストーンズからはミックとキース、そしてイアンだけだ(ロン・ウッドの家で録音したのにロンは入っていないところは、まるで家を溜まり場にされた後輩と、その家に勝手に上がり込んで傍若無人に振る舞う近所の怖い先輩たちみたいで、当時のロンの立ち位置がよくわかる)。ベースのリック・グレッチは元ブラインド・フェイスだ。
その後、ロンドンのスタジオでも録音の続きが行われ、完成したものの、ストーンズのアルバムには収録されなかった。ペイジは以下のように続けている。
最近になってミックから連絡があり、完成版を聴かせてもらった。非常に素晴らしい、本当にソリッドなサウンドだと思った。彼らが近日発売予定の『山羊の頭のスープ』の一部としてリリースすることを選んでくれたのが嬉しい。70年代にツェッペリン以外で俺が弾いているのは超レアだよ。
(Web版Rolling Stone誌「ジミー・ペイジが語る、ローリング・ストーンズの共演秘話」)
すごい名曲というわけでもないが、ちゃんとジミー・ペイジらしいグルーヴ感のあるギターも聴けるし、キースとの絡みはスリリングで、カッコいい曲に仕上がっている。
そして『山羊』デラックス版のDisc 3は、ベルギーのブリュッセルで1973年10月17日に行われたライヴが収録されている、これがなんというか、物凄い。解散コンサートなのかと思わせるぐらい、えらくヒートアップしたライヴだ。
ミックは喉も裂けよとばかりに吠え叫び、キースのギターは昭和の暴走族みたいな爆音だ。ミック・テイラーは狂ったように弾きまくるし、チャーリーもビルも興奮して前のめりに疾走している。
Disc 3
『ブリュッセル・アフェア – ライヴ1973』
フォレスト・ナショナル・アリーナ(1973年10月17日)
- ブラウン・シュガー – Brown Sugar
- ギミー・シェルター – Gimme Shelter
- ハッピー – Happy
- ダイスをころがせ – Tumbling Dice
- スター・スター – Star Star
- ダンシング・ウィズ・ミスターD – Dancing with Mr. D.
- ドゥー・ドゥー・ドゥー(ハートブレイカー) – Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker)
- 悲しみのアンジー – Angie
- 無情の世界 – You Can’t Always Get What You Want
- ミッドナイト・ランブラー – Midnight Rambler
- ホンキー・トンク・ウィメン – Honky Tonk Women
- オール・ダウン・ザ・ライン – All Down the Line
- リップ・ディス・ジョイント – Rip This Joint
- ジャンピン・ジャック・フラッシュ – Jumpin’ Jack Flash
- ストリート・ファイティング・マン – Street Fighting Man
「アンジー」はサビのメロディーのいちばん高い部分(いちばんグッとくるところだ)を、後年のミックはあの高さが出ないのでオリジナル通りに歌わないが、ここではオリジナル通りに歌おうと果敢にチャレンジしている。ギリ出なくて結局歌えていないが、それでも感動的だ。
12分以上に及ぶ「ミッドナイト・ランブラー」は圧巻のひと言だし、最後の「オール・ダウン・ザ・ライン」からの4曲は怒涛の勢いで燃え尽きるようなライヴだ。こんなことを毎日やっていたら死んでしまうのではないかと思うほどだ。アツいということで言えば、公式に残されたライヴではこれがいちばんかもしれない。
ジミー・ペイジ参加の「スカーレット」や激アツライヴと聴きどころの多いこのデラックス・エディションは、リイシュー盤にも関わらず、アルバムチャートで全英1位、全米19位のヒットとなった。
(Goro)