ザ・ポーグス/ニューヨークの夢 (1987)

Fairytale of New York - Wikipedia

【80年代ロックの快楽】
The Pogues
Fairytale of New York (1987)

英国生まれのアイルランド人、シェイン・マガウアン(ヴォーカル)を中心としたロンドンのケルティック・パンク・バンド、ザ・ポーグスの、全英2位となった大ヒット曲。

歌詞の舞台はニューヨーク。

クリスマス・イヴの夜に泥酔して留置場に入れられたアイルランド移民の男は、留置場の先客である老人がアイルランド民謡を口ずさむのを聞き、自分の未来に彼を重ね合わせる。おれの人生はこんなはずじゃなかった、もっと違う誰かみたいになれたはずだった、と嘆く。

一方、男の妻は、女優になる夢を胸に抱いて、男と一緒にアイルランドからニューヨークへやってきた昔を思い出しながら、実はただのろくでなしのクズだった男に夢を奪われたと嘆く。

成功を夢見てニューヨークへやってきたアイルランド移民の夫婦が、夢も叶わないまま年を重ね、冴えない現実をお互いのせいにして罵り合う、ユーモラスではあるけれども、クリスマス・ソングにしてはえらく物悲しい歌だ。

実のところ、男は彼女が女優になることに夢を託し、彼女は男の言葉だけを信じてその気になっていただけのことだった。お互いが相手に夢を託しているだけで、自分ではなにもできなかったんだ、と歌う。

ヴォーカルのシェインと、ゲスト参加の女性シンガー、カースティ・マッコールが夫婦を演じて歌い、「ヤク中」だの「ホモ野郎」だの「ヤリマン」だの「ウジ虫」だのと、かなり際どい下品な言葉で罵り合う部分もある。

大都会の最下層で生きる人々のリアルな言葉と想いが共感を呼んで大ヒットしたのだろう。せつないけれど、なんだかじんわりと沁みる歌だ。

夢が叶う人というのはきっと、夢を叶える才能を持っているのだろうな。
夢なんて、普通は叶わないものだ。

でも、死ぬまでずっと「こんなはずじゃなかった」と思いながら生きるのは、なんだかつまらない。

今の生活は全て、運命が導いてくれた、自分の身の丈に合った、自分にとって最善の生き方をしているのだ、と思うことにしよう。

(Goro)