The Jesus And Mary Chain
Upside Down (1984)
キュイイイーーーーーーンンンピピピピーーーーキィィィィィキキキキキキーーーガーーーーーーーーーーーーー、、、、
最初から最後まで耳をつんざくようなフィードバック・ノイズの嵐、その嵐の向こうにドラムのドコドコいう音と、人の歌声らしきものがかろうじて聴こえる。
こんなものは音楽と言えない。
ただの騒音だ。
バカバカしい。
そう考えるのが普通なんだろうと思う。
しかしこの英国発の、ジムとウィリアムのリード兄弟を中心としたバンドの衝撃のデビュー・シングルは、その賛否はともかくとして、結果的にその後のロックシーンの流れを変えた、80年代インディー・ロックの最重要シングルであり、90年代ロックの方向性をも決定付けた。
わたしは当時、リアルタイムの80年代の音楽がイマイチ好きになれなくて、60~70年代のロックしか聴いていなかった。なので80年代後半にもしもジーザス&メリー・チェインに出会っていなければ、リアルタイムのロックを積極的に聴き始めることは無かったかもしれない。90年代のあのオルタナ革命のお祭り騒ぎも体験できなかったかもしれない。危ない、危ない。
この殺伐とした、異常に完成度の低いバンドが放射する、耳をつんざくフィードバックノイズの嵐は、過去のロックばかり聴いていた後ろ向きのわたしに、未来のロックをもっと聴きたいという熱狂的な気分にさせたのだ。
普通に考えてこれが商業的に成立するとは到底思えないのだけれども、NMEのシングルランキングで2位まで上昇したということは、それなりにロック好きには支持されたということでもあるし、わたしもこれを前衛とかではなく「意外とポップで超カッコいい曲」と思ったものだった。まあえらく聴きにくいポップ・ソングではあるが、もともとロックなんてものは聴きにくいのがウリの音楽なのだ。
こんなものは音楽と言えない。
ただの騒音だ。
バカバカしい」。
それは、ロックが生まれたその当時から、ビートルズやローリング・ストーンズやボブ・ディランに対して、当時の大人たちが浴びせた罵声と同じものだ。
ロックとは本来そういうものだったのに、ロックだって商売なのでいつのまにか万人が聴けるような聴きやすいものへと変わっていったのかもしれない。
この衝撃的なシングルは、少なくともわたしにとっては、ロックの原点を思い出させてくれたものだった。
(Goro)