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【最強ロック名盤500】#275
The Damned
“Machine Gun Etiquette” (1979)
あまり知られていない事実だが、ダムドの最高傑作はこれである。
ダムドの代表作というと、たいていあのケーキをぶつけ合ったみたいなジャケットの1stが紹介されがちなので、みんなアレを買いがちで、大体はあれだけ聴いて、もうダムドはわかったような気になりがちである。
違うんだな。
これを聴かずにダムドはどうのこうのなんて言っても意味がないのだ。
本作は1979年11月にリリースされた、ダムドの3rdアルバムである。
1stからこの3rdまでの2年9ヶ月のあいだに、ダムドも状況が変わり、ずいぶんいろんなことも経験した。
77年のパンク・ムーヴメントを牽引した1stアルバムは高く評価されながら、2nd『ミュージック・フォー・プレジャー』は内容的にもセールス的にも大失敗に終わり、所属レコード会社からクビを言い渡され、78年の春には一度解散もしている。
その後、再結成して新しいレコード会社と契約しものの、バンドのソングライターだったギターのブライアン・ジェイムスは結局戻ってこなかったため、ベースのキャプテン・センシブル(セサミストリートの鳥みたいなやつ)がギターを弾き、ベースにはアルジー・ワードが加入し、曲は全員で知恵を絞って書くことになった。
そして初めて4人で作った新曲「ラブ・ソング」を79年4月にシングルリリースすると、デビュー以来初となる、英シングルチャートの20位まで上昇するヒットとなったのだ。
それに気をよくしながらアルバム制作に入り、全員がいろんなアイデアを出したためか、音楽性の幅がグッと広がり、しかもダムドらしいスピード感はさらに増して、1stよりも断然良い出来になったというわけだった。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ラブ・ソング
2 マシンガン・エチケット
3 荒廃の街角
4 メロディ・リー
5 アンチ・ポウプ
6 ジーズ・ハンズ
SIDE B
1 プラン9チャンネル7
2 ノイズ・ノイズ・ノイズ
3 ルッキング・アット・ユー
4 ライアー
5 スマッシュ・イット・アップ(パート1&2)
1979年11月と言えば、もうパンク・ムーヴメントはとっくに終わっている。時代は「ポスト・パンク」の時代であり、パンク・バンドとしてデビューしたバンドたちは、限界を知って解散するか、パンク以外の方向性を模索していた。
ダムドはしかし、シーンを牽引した最初期のパンク・バンドらしい矜持を見せ、「パンクの限界を突破したぞ!」と、本作で示してみせた。猛烈にうるさいのにポップだし、激しく速いのになぜか聴きやすい。多彩なスタイルとアイデアの奔流で、パンクのあの高揚感を再び取り戻したのだ。
セサミストリートのキャプテン・センシブル は「3コード・パンクの定型から抜け出して、“ちゃんとした曲”を書けることを証明したかった」(モジョ誌インタビュー2004年)と語り、ヴォーカリストでドラキュラのデイヴ・ヴァニアンは「とにかく僕らが好きなもの全部を詰め込んだ。ガレージ・ロックもサイケもモータウンも、何でもだよ」(クラシック・ロック誌 2015年)と後に語っている。
70年代パンクで最も過小評価されているアルバムは?と訊かれたら、わたしはこの『マシンガン・エチケット』を挙げるだろう。
本作を聴いてみれば、そもそもダムドのことを過小評価していたことにもあらためて気付かされるに違いない。
↓ 全英20位のヒットとなった「ラブ・ソング」。「君が配達員なら僕は荷物になる。君がゴミ箱なら僕はゴミになる。君が缶詰なら僕はラベルの絵の具になる」とバカがバカなりに真剣に愛を伝えているような素敵な曲だ。
↓ ラストを締めくくる、ダムドの代表曲のひとつ「スマッシュ・イット・アップ Part1&2」。
(Goro)