⭐️⭐️⭐️
【最強ロック名盤500】#235
The Damned
“Damned Damned Damned” (1977)
どうかな。聴くかな。
最近の若いロック・ファンは。
ダムドを。
でも、ダムドを人に薦めたことはない。
それは美味いラーメンなら人に薦めるけど、激辛ラーメンはたとえ好きでも人に薦めないのと同じようなことだ。
その昔、もう50年近くも昔の話だ。1970年代後半に英米でパンク・ロック・ムーヴメントが巻き起こった時代、セックス・ピストルズ、クラッシュ、そしてこのダムドを「三大ロンドン・パンク」と呼んだものだった。
セックス・ピストルズやクラッシュのアルバムは今でもロックの「歴史的名盤」として若い人にも聴かれているようだけれども、ダムドはどうだろうか。もう忘れられてしまっているのではないだろうか。
でも、今でも現役で活動しているのはダムドだけだ。
オリジナル・メンバーは、ドラキュラみたいな恰好をしたヴォーカルのデイヴ・ヴァニアンと、セサミストリートの鳥みたいな恰好をしたベースのキャプテン・センシブル(後にギターに転向する)、初期の楽曲のほとんどを書いていたギターのブライアン・ジェイムスと、天才なのかアホなのかわからない(たぶんその両方だろう)ドラムのラット・スケイビーズだ。
2023年にラットが復帰して、現在はブライアン以外はオリジナル・メンバーとなっている。
本作はニック・ロウがプロデュースし、1977年2月にリリースされたダムドの1stアルバムだ。ロンドン・パンクの最初のアルバムだった。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ニート・ニート・ニート
2 ファン・クラブ
3 アイ・フォール
4 ボーン・トゥ・キル
5 スタッブ・ユア・バック
6 フィール・ザ・ペイン
SIDE B
1 ニュー・ローズ
2 フィッシュ
3 シー・ハー・トゥナイト
4 ワン・オブ・ザ・ツー
5 ソー・メスト・アップ
6 アイ・フィール・オールライト(ストゥージズのカバー)
B1「ニュー・ローズ」はダムドのデビュー・シングルで、ロンドン・パンクでは1番早いレコード・デビューだった。もちろんチャートなどにはカスリもしていないが、パンク・ロックの永遠のアンセムとして聴き継がれた。キース・ムーン以来の狂乱のドラマー、ラットのドラムが最高だ。
A1「ニート・ニート・ニート」は2枚目のシングルとなったが、こちらはかろうじて全英チャート52位という成績を残している。日本では当時「嵐のロックンロール」という邦題が付けられた。「ニート」とは引きこもりの”Neet”ではなく、”Neat”で「いいじゃん!」みたいな意味らしい。お姉ちゃんに向かって「いいじゃん!いいじゃん!いいじゃん!」と、ナンパしようとしている歌らしい。
ひどい音、テキトーな曲、すごい勢い、と三拍子揃った、パンク・ロックという言葉が最もふさわしいアルバムであり、名盤という言葉が最もふさわしくないアルバムでもある。
パンクが好きな人は今でも多い。
でもダムドなんて、今でも聴くのだろうか。
べつに聴かなくてもいいけど、でも「ダムドが好き」なんて聞くと、ああ本当にパンクが好きなんだなあと思う。
わたしも長いあいだ聴いてなかったけど、これを書くために何年ぶりかに聴きなおした。
この騒々しさ。
この馬鹿馬鹿しさ。
この勢い。
この絶叫。
この完成度の低さ。
このリアリティ。
パンクってのはこういうもんだったな、とあらためて思った。
闇雲な疾走感と、漲るエネルギーの大放出のような力任せの音響が、音楽の枠を超えてビリビリと放電し、わたしを感電させて黒焦げにした、これぞパンク・ロックというべきアルバムだ。
ぜひ、普段の2倍の音量で聴いてみてほしい。
↓ ダムドのデビュー・シングルであり、永遠のパンク・ロック・アンセム「ニュー・ローズ」。
↓ 2枚目のシングル・カット「ニート・ニート・ニート」。当時の邦題「嵐のロックンロール」はきっと暴風雨のような音の印象から付けたのだろう。
そしてつい2日前、上の2曲を含め、1stと2ndの曲のほとんどを書いたオリジナルメンバーのブライアン・ジェイムスの訃報が飛び込んできた。70歳だったという。ロンドン・パンクの幕開けを告げたシングル「ニュー・ローズ」をはじめ、ロックの歴史に偉大な足跡を遺したソングライターであり、ギタリストだった。R.I.P.
(Goro)