現在ブレイク中の若手漫才師ぺこぱの松陰寺太勇を見るたびにロバート・スミスを思い出してしまって、最近はキュアーを聴き返すことが増えた。
初期のダークでメランコリックな作風だけでなく、ポジティヴな楽曲や、バラエティに富んだアレンジも楽しく、聴き飽きない奥の深さにあらためて惚れ直したりしている。
ロバート・スミスを中心にイングランド・クローリーで結成されたザ・キュアーは、1978年にデビューした。
以来、ロバスミ以外はメンバー交代を繰り返しながら、今年で活動42年を迎える。すごい。
初期の作風では、無駄な音を排した疾走感のあるギター・ロックがカッコ良かったし、やがてダークで陰鬱なゴシック・ロック風に変貌した。
90年代になると王道ロックへと回帰し、本気のキュアーの実力をポジティヴな音楽性で見せつけ、いちばん嫌われそうなアメリカでも爆発的に売れるという快挙を遂げた。
ダークな作風も魅力的なキュアーだけど、わたしは彼らの楽曲の中でもわりにポジティヴな作風のものがどうも好きなようで、ここで選んだものには結構そういうのが並んでしまった。
キュアーって、言うほど暗くないんですよ。
以下は、わたしが愛するザ・キュアーの至極の名曲ベストテンです。
In Between Days
85年のアルバム『ザ・ヘッド・オン・ザ・ドアー(The Head on the Door)』のオープニングを飾る曲。シングル・カットされて全英15位のヒットとなった。
この頃のキュアーがよく使った空気砲みたいな軽いシンセの音が特徴的な、ポップな曲だ。
High
90年代初頭の流行を敏感に察知したのか、全体にオルタナティヴ系ロックっぽいノイジーなギター・ロックに仕上げた名盤『ウィッシュ(Wish)』からのシングル。全英8位。
『ウィッシュ』はキュアーの中でわたしがいちばん好きなアルバム。
ダークもゴスも脱ぎ捨てた、正攻法のロックで圧倒的なパワーとクオリティの楽曲群にぶっ飛ばされたものだ。
この「ハイ」は、80年代のキュアーの耽美的でなまめかしい質感も残しつつ、ガリガリとしたギターも入る。
熱くもなく冷たくもない、「常温」のサウンドが心地よい。
The Lovecats
キュアーにとって初めての全英トップテン・ヒットとなった記念すべきシングル。全英7位。
作者のロバスミは「冗談みたいなつもりで書いた曲で、あまり気に入ってない」そうだが、どことなくレトロなキャバレー・ショーを想起させるような作風は、彼の音楽的な引き出しの豊富さにあらためて感心させられる。
A Letter to Elise
全米2位と、信じがたいようなビッグ・ヒットになった92年のアルバム『ウィッシュ』からの3枚目のシングル。全英28位。
ミディアム・テンポのせつないメロディだけど、決して暗くはない。
ライヴで聴いたら感動するだろうな。
スタジアムの大観衆をまるごと揺らしそうな、スケールの大きな曲だ。
Lovesong
1989年のアルバム『ディスインテグレーション(Disintegration)』からのシングルで、全英18位はいつも通りぐらいだったけど、なぜかアメリカで爆発的に売れ、全米2位の大ヒットとなった。
キュアーにとって唯一の全米トップテン入りしたシングルとなり、現在でも彼らの代表曲として知られている。
ちょっと艶っぽい感じと、メロディアスなアレンジが印象に残る、たしかに良い曲だけれど、それまで他の曲に目もくれなかったアメリカ人が、急にこれを気に入った理由はよくわからない。
Just Like Heaven
1987年発表の2枚組LP『キス・ミー、キス・ミー、キス・ミー(Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me)』からのシングル。全英29位、全米40位。
キュアーのイメージを覆すような明るくポップな楽曲が増えたアルバムで、この曲はまさにそれを象徴する天国的な幸福感に満ち溢れた曲。
Catch
『キス・ミー、キス・ミー、キス・ミー』からの2ndシングル。全英27位。
3分にも満たないシンプルな小曲だけれど、なぜか心をワシ掴みにされるロマンティックな曲だ。
ロバスミがたまたまTVで『ロッキー2』で、エイドリアンが出産後に昏睡状態に陥って生命の危機に瀕したときにロッキーが詩を書く場面にインスパイアされて書かれたそうだ。
The Caterpillar
84年のアルバム『ザ・トップ(The Top)』からのシングルで、全英14位。
前作の「ラヴキャッツ」からセールスも好調で、陰鬱で内向的なゴスから、ポジティヴで明るいゴスへと変わりつつあった時代だ。
Friday I’m in Love
それまでの陰鬱でダークでゴスなキュアーのイメージを一新するような、明るくて、ユーモラスで、プリティなポップ・ソングだ。全英6位、全米18位の大ヒットとなった。
PVも楽しい。キュアーの中でいちばん好きなPVだ。
Boys Don’t Cry
青春の甘酸っぱさとせつなさを想わせるようなギターのリフと疾走感が印象的な、キュアーの3rdシングルで、初期の代表曲だ。
なんだかんだ言ってもこのシンプルで青臭い曲に、結局わたしはグッときてしまうのだ。何年経っても。
入門用にキュアーのアルバムを最初に聴くなら、ベスト・アルバム『グレイテスト・ヒッツ』がお薦めだ。最初に聴くべき代表曲はだいたい網羅されている。
以上、ザ・キュアー【名曲ベストテン】でした。
(by goro)