⭐️⭐️⭐️⭐️
“The Commitments”
監督:アラン・パーカー
主演:ロバート・アトキンズ、アンドリュー・ストロング
音楽:ウィルソン・ピケット
実話でも伝記映画でもないし、若者たちがバンドを組んで盛りあがった青春の1ページ、というだけの物語なのだけど、なぜか魅かれる作品だ。
バンドメンバーとして出演している者のほとんどがオーディションで選ばれた素人で、本職の役者ではない。しかしそんな彼らならではの、洗練はされていないけれども、演技感の無い一生懸命な演奏シーンが魅力なのだと思う。
特にリード・ヴォーカルの”デコ”の歌声のインパクトは凄い。彼はこの映画出演をきっかけにレコード・デビューし、その後もミュージシャンとして活躍した。
個人的にはダブリンの街の、いかにも夢も希望もないような曇り空の下のしょぼくれた風景がまた魅力的だ。まあ、住みたいとは思わないけれども、映画としてはずっと見ていたくなる色合いの風景である。
サクセス・ストーリーというわけでもなくて、一瞬だけ盛り上がってすぐに終わってしまった、青春の1ページ。まるで学園祭の準備みたいな、終わってしまうと一抹の寂しさを感じ、なぜか生涯忘れられない記憶になる。そんな瞬間を描いたような物語だ。
見終わった後もまるであのバンドに自分が参加していたみたいな、そんな気分が何年経っても心に残る、不思議な作品だ。