The Beach Boys
Good Vibrations (1966)
サラッと聴けばポップでキャッチーで、ビチボコーラスが耳に残る楽しい曲だけれども、じっくりよく聴くとものすごく独特でヘンな曲だ。でも何回聴いてもグッとくる。
この年の5月にリリースされた異常名盤『ペット・サウンズ』のレコーディング時に録音された曲だったが、作者のブライアン・ウィルソンの意向でアルバムには収録されなかった。
その後もこの曲のレコーディングは続けられ、あるメンバーによると、オーバー・ダビングのために2秒や5秒の同じヴォーカル・パートを三十回も歌わせられたと言う。
そんな偏執的な録音作業の結果となった90時間に及ぶテープが3分半にまとめられた。もはや狂気の沙汰である。しかし出来上がったものは前代未聞の名曲だった。、全米1位、全英1位など、世界中のチャートで1位を獲得し、ビーチ・ボーイズ史上最大のヒットとなった。
手を触れない不思議な楽器、テルミンがちゃんと効果的な形で使用されているめずらしい曲でもある。
作者のブライアン自ら「ポケット・シンフォニー」と呼んだが、楽章が変わるように曲調が変化し、ハッとするような美しいメロディやポップでキャッチーな断片がコラージュされて、展開の読めないワクワクするようなポップソングに仕上がっている。何度聴いても飽きない。
1966年10月にシングル・リリースされると、革新的で、常軌を逸した音楽のようでありながら意外にも幅広い支持を得、全米・全英で1位を獲り、彼らの最大のヒット曲となった。
こういう曲こそがロックミュージックのあるべき姿、ただのポップスとは違う、音楽的野心と志の高さを見せつけた本当の名曲なのではないかとわたしは思う。
(Goro)