13thフロア・エレヴェーターズ『イースター・エヴリホエア』(1967)【わたしが選ぶ!最強ロック名盤500】#116

Easter Everywhere - 'Psychedelic' Colored Vinyl [Analog]

⭐️⭐️⭐️

【わたしが選ぶ!最強ロック名盤500】#116
13th Floor Elevators
“Easter Everywhere” (1967)

13thフロア・エレヴェーターズは米テキサス州で結成された、奇妙なサウンドとブッ飛んだ世界観で知られている異端のサイケデリック・ガレージ・ロック・バンドだ。本作は彼らが1967年11月にリリースした2ndアルバムだ。

1966年11月にリリースした1stアルバム『ザ・サイケデリック・サウンド・オブ・ザ・13thフロア・エレヴェーターズ』のほうが、そのわかりやすいタイトルと強烈なインパクトのジャケットのおかげで印象を強くしている感があるが、音楽的には2ndの本作のほうが圧倒的に充実していると思う。

The Psychedelic Sounds of the 13th Floor Elevators1stアルバム『ザ・サイケデリック・サウンド・オブ・ザ・13thフロア・エレヴェーターズ』

彼らのサウンドで特徴的なのは、「エレクトリック・ジャグ」という妙な楽器が使われていることだ。よく聴くとトゥクトゥクトゥクトゥクとかポコポコポコポコなどと聴こえるのがそうだ。

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上の写真の左から2番目がそのエレクトリック・ジャグ奏者のトミー・ホールだ。こんなふうに何か息を吹き込んで音を出すらしい。

これがロックバンドに必要な楽器なのかどうかはよくわからないが、その独特の音によって妙な浮遊感のある特徴あるサウンドになっているのは確かだ。

このトミー・ホールと、”狂人”と評されたヴォーカリスト、ロッキー・エリクソンがバンドの中心メンバーである。トミー・ホールの呼びかけで、バンドはレコーディングやライヴのときには必ずLSDを使用することにしていたそうだが、それを嫌がってメンバーが脱退することもあったという。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 Slip Inside This House
2 Slide Machine
3 She Lives (In A Time Of Her Own)
4 Nobody To Love
5 It’s All Over Now, Baby Blue

SIDE B

1 Earthquake
2 Dust
3 I’ve Got Levitation
4 I Had To Tell You
5 Postures (Leave Your Body Behind)

A6「It’s All Over Now, Baby Blue」だけがボブ・ディランのカバーで、あとはオリジナルである。B4、A3、A1がシングル・カットされたが、チャート入りはしなかった。

A1「Slip Inside This House」は、プライマル・スクリームが91年リリースの『スクリーマデリカ』でカバーしたことで少しだけ知られているが、この曲が本作では一番の聴きものだ。

1stに比べると、リズム隊が替わったせいか筋の通ったサウンドになり、内省的な曲も増え、ちゃんと音楽に向き合っている感じがする。エリクソンも1stに比べれてはしゃぎすぎず、声も真剣味を帯びて、聴きやすくなった。LSDの量を少し抑えたのかもしれない。

しかしこの翌年、ロッキー・エリクソンはマリファナの使用で逮捕され、さらに3rdアルバムのレコーディングの途中で精神錯乱で入院することになる。そのままバンドは崩壊し、3rdアルバム『Bull of the Woods』がリリースされた1969年3月にはすでに解散していた。

↓ プライマル・スクリームがカバーした「Slip Inside This House」。アルバムに収録されているのは8分ほどの長さだが、こちらは4分ほどに編集されたシングル・バージョン。

Slip Inside This House – Original (Original Single Edited Version)

↓ ボブ・ディランのカバー「It’s All Over Now, Baby Blue」。ディランと13thフロアなんて意外な組み合わせの感じがするが、なにかえらく落ち込んでるような、哀愁を帯びた感じがわりと好きだ。

[It's All over Now] Baby Blue

(Goro)