
⭐️⭐️⭐️
Suede
“Dog Man Star” (1994)
1stアルバムの、退廃的な内容でありながら、それをエンタメに利用したキャッチーな音楽性とはうって変わって、まるで自ら成功への階段を許絶し、途中で飛び降りるような、過剰なまでに暗く、耽美的で、変態的で、病的なほど傲慢で、徹底的に不健全なアルバムである。
前作はグラム・ロックやブリット・ポップとして語られたけれども、さすがにこれだけダークな作品となるとそんな生やさしいものとして語られることはあるまい。なんだかDCコミックス『バットマン』の枠からはみ出しすぎてしまったサイコスリラー、2019年の映画『ジョーカー』の異端ぶりを思い出した。
本作の制作中に、ヴォーカリストのブレット・アンダーソンとギタリストのバーナード・バトラーの関係が険悪となり、本作を最後にバーナードが脱退した。彼は完璧さにこだわり、すべてをコントロールしたがり、他のメンバーとの衝突が頻発していたという。
バーナードは次のように語っている。「僕は“美しいアルバム”を作りたかった。それがバンドを壊すことになるとは、その時はわからなかった」(Select 誌インタビュー, 1994)
本作は1994年10月に、スウェードの2ndアルバムとしてリリースされた。
【オリジナルCD収録曲】
1 イントロデューシング・ザ・バンド
2 ウィー・アー・ザ・ピッグス(英18位)
3 ヒロイン
4 ザ・ワイルド・ワンズ(英18位)
5 ダディーズ・スピーディング
6 ザ・パワー
7 ニュー・ジェネレーション(英21位)
8 ディス・ハリウッド・ライフ
9 ザ・トゥー・オブ・アス
10 ブラック・オア・ブルー
11 アスファルト・ワールド
12 スティル・ライフ
3枚のシングルは英国でもトップ10入りすることなく、アルバムは全英3位まで上昇したものの、販売枚数は前作の10分の1程度にとどまった。当時流行のブリット・ポップの陽性な軽やかさとは真逆を行く、暗黒の重厚さであり、商業的に成功する見込みは初めからなかったと言える。しかし、芸術的には前作を超える成功作だと言えるだろう。
ブレットは次のように語っている。「これは、僕らが完全に壊れかけていた時期の記録だ。
でも、だからこそ正直なアルバムになった」(Mojo 誌インタビュー, 1994)
決して聴きやすい作品ではないけれども、疎外感や懊悩に震えるブレットの妖艶な歌声と、ときに叙情的、ときに挑発的、そしてときに暴力的なバーナードのギターが同時に響き渡る、奇跡的で、官能的で、奥深いアルバムである。
↓ 先行シングルとしてリリースされ、全英18位となった「ウィー・アー・ザ・ピッグス」。ラストに向かって制御不能のように壊れていく。本作という「闇」への入り口だ。
↓ アルバムからの2ndシングル「ザ・ワイルド・ワンズ」。バーナードのロマンティックなギターも印象的な、スウェード屈指の抒情的バラード。本作の「心臓」とも言える楽曲だ。
(Goro)

