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Stray Cats
“Stray Cats” (1981)
わたしが中二の頃まで住んでいた愛知県の田舎町の学校では、下敷きの代わりにコクヨのA4透明ケースを使うのがはやっていた。その下敷き代わりのケースに月刊明星やらミュージックライフやらの雑誌から切り抜いた写真を入れて授業中に眺めたり、クラスメイトに見せびらかすなどして楽しむのだ。
中二のわたしは音楽雑誌で見つけたストレイ・キャッツのデビュー・シングル「涙のラナウェイ・ボーイ」の広告で初めて彼らを見て、「かか、か、かっけー…」とシビれてしまい、そのページを切り取って下敷きケースに挟んで登校したものだった。クラスメイトにはキッスやチープ・トリックやビートルズなどが好きな連中がいたが、彼らもその写真を見ると一様に「カッコええ!」と感嘆していた。
しかし実はそのときわたしはまだストレイ・キャッツの音楽を聴いたことがなかった。当時のわが家にはレコードプレーヤーがなかったので、彼らの音楽を聴くためには、ラジオから流れてくるまで根気よく待つ以外になかったのだ。
そして運良くラジオで彼らのデビュー・シングル、「涙のラナウェイ・ボーイ」を聴くことができ、わたしは再び「かか、か、かっけー…」と白目を剥いたものだった。
ただし、中二のわたしは〈ロカビリー〉なんて言葉はまだ知らなかったので、彼らの音楽もまた当時流行の「ニュー・ウェイヴ」だと思っていた。
後になって1950年代の音楽スタイルを模倣したものだと知ったが、しかしあながち間違いでもなくて、ストレイ・キャッツのロカビリーはただの懐古趣味ではなく、ちゃんとパンクを通過した新しい時代の耳を刺激するだけの新機軸と、熱々の息吹を持ちあわせたリアルタイムのロックだった。
彼らは米ニューヨーク出身のバンドだったが、当時パブ・ロックやテディ・ボーイズの文化が流行していたイギリスで活動することを選び、そしてその思惑通りに人気を博した。
彼らのエネルギッシュなステージは噂が噂を呼び、ミック・ジャガーやキース・リチャーズ、レッド・ツェッペリンやザ・フー、クラッシュのメンバーなども観にやって来るなど、すでにデビュー前から大いに話題になっていた。
本作はそんな彼らが1981年2月にリリースした1stアルバムだ。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 涙のラナウェイ・ボーイ
2 悩殺ストッキング
3 ユバンギ・ストンプ
4 ジニー・ジニー・ジニー
5 嵐の中の大使館
6 ロック・タウンは恋の街
SIDE B
1 ランブル・イン・ブライトン
2 気取りやキャット
3 クロール・アップ・アンド・ダイ
4 ダブル・トーキン・ベイビー
5 マイ・ワン・ディザイアー
6 ワイルド・サクソフォン
アルバムは全英6位の好発進となり、シングル・カットされたA1「涙のラナウェイ・ボーイ」が全英9位、A6「ロック・タウンは恋の街」が全米9位、全英9位、さらにはB2「気取りやキャット」が全米3位、全英11位と大ヒットを連発した。日本でもオリコンチャートに入るなど人気が高く、来日して『夜のヒットスタジオ』にも出演した。
彼らの母国アメリカでは翌82年になって1stと2ndからチョイスした編集盤『ビルト・フォー・スピード(Built For Speed)』がデビュー盤としてリリースされ、これも15週連続全米2位という記録的大ヒットとなった(1位になれなかったのはマイケル・ジャクソンの『スリラー』が居座っていたためだ)。
中二のときにラジオで「涙のラナウェイ・ボーイ」を聴いてからおよそ7年の時を経て、社会人になっていたわたしは彼らの1stアルバムをようやくCDで手に入れ、とても、とても気に入ったのだった。
「涙のラナウェイ・ボーイ」はよく憶えていて、とても懐かしかった。あの頃は全神経を集中させてラジオを聴いていたので、実際には1~2回しか聴いていなくても、脳内再生をヘビロテで繰り返したため、よく覚えていたものだ。今では絶対にそんな芸当はムリだけれども。
余談だが、フロントマンのブライアン・セッツァーはメジャーリーグで活躍したイチロー選手の大ファンであり、2002年にイチロー選手が出演したペプシの日本向けCMにもオリジナルの楽曲「Pep Pep Pepsi」を提供している。
↓ デビュー・シングル「涙のラナウェイ・ボーイ」。初めて聴いたときの衝撃もあってか、やっぱりわたしはこれが一番好きかな。
↓ 全米3位の大ヒットとなった「気取りやキャット」。哀愁のあるメロディがたまらない。
(Goro)
コメント
僕はGoroさんよりほんの少し下の年齢ですので、
(She’s) Sexy + 17から入りました。
ブライアン、今は病気でギターが弾けないとのことですよね。
今となっては、あのプレイスタイルは唯一無二で、
とにもかくにも彼の回復を祈るのみ。
それにしても、本当にかっこいい!!
アイアイ♪さん、いつもありがとうございます!
本作はネオ・ロカビリーの元祖とも言える名盤だと思いますが、実はネオ・ロカビリーと言ってもわたしが知ってるのはストレイ・キャッツだけなんですよね(笑)
ロカビリーに興味があるわけでもない子供心にも惹かれた、それぐらい彼らはカッコよかったんですね。