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Stiff Little Fingers
“Inflammable Material” (1979)
もう、これはパンク・バンドという他ない、実にパンク・バンドらしいパンク・バンドだ。
パンクが嫌いな方にはもう、ごめんなさいとしか言いようがない。
全力投球で直球ど真ん中。ツバが飛んできそうな、ギターの弦がバチバチ切れてしまいそうな、そんなアッッツいバンドだ。
北アイルランド・ベルファスト出身のスティッフ・リトル・フィンガーズが1979年2月にリリースした1stアルバムである。
デビュー当時平均年齢21歳の彼らだったが、ただ熱いだけではなく、彼らが生まれ育った北アイルランドの紛争を背景に、政治、暴力、そして若者の絶望や怒りを真っ向から歌った。
しかもただのアジテーションにはならないよう、彼らは程よくキャッチーな曲にまとめるセンスも持っていた。そこに、ただの小うるさい社会派パンク以上の、音楽的な才気が感じられた。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1. Suspect Device
2. State of Emergency
3. Here We Are Nowhere
4. Wasted Life
5. No More of That
6. Barbed Wire Love
7. White Noise
SIDE B
1. Breakout
2. Law and Order
3. Rough Trade
4. Johnny Was
5. Alternative Ulster
6. Closed Groove
それにしても、ギターがいい音で録れたなあ。
A1「Suspect Device」の壊れかけのバイクのエンジンみたいな爆音ギターのイントロだけで、たいていのパンクスの心を一瞬でつかんだに違いない。わたしも一瞬でつかまれた。
もともと彼らは、「ハイウェイ・スター」というダサい名前のハードロック・バンドだったらしい。しかし英米のパンク・ムーヴメントに触発され、バンド名を変え、音楽性を変え、パンクへと舵を切った。なのでもともと演奏技術はしっかりしているので、熱血でやっても粗雑にはなりすぎず、タイトで聴きやすいのだ。
本作はインディーズ・レーベルからのリリースながら、全英アルバムチャートで堂々14位にランクイン。これはインディーズ史上初の快挙だった。
シングル・カットされたB5「Alternative Ulster」もまた、いかにもパンクなギター・リフで始めておきながら、歌メロに入ると意外なほどポップで耳に残る曲だ。若者たちに「もうひとつの選択肢(Alternative)」を呼びかけたこの歌は、永くパンク・アンセムとして愛された。
ほかにも、忘れてはならない名曲のA4「Wasted Life」、ボブ・マーリーの「Johnny Was」の緊張感あふれるカバーなど、聴きどころ満載だ。
それにしても、「熱い」ということは、やっぱり素晴らしい。
歳を重ねると、年々その思いは強くなる。
熱い人間は、社会の役に立つのである。キャンドルサービスみたいに、人々の心に火を灯してくれる。
わたしも、いい歳こいてと言われようが、熱い気持ちだけは忘れたくないものだ。
↓ オープニングを飾るデビュー・シングル「Suspect Device」。英インディ・チャートの17位まで上昇した。
↓ 2ndシングルの「Alternative Ulster」。英インディ・チャート11位まで上昇するヒットとなった。
(Goro)