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Sonic Youth
“Daydream Nation” (1988)
エレキギターの刺激的なノイズを全身に浴びて、リフレッシュしたい日にはうってつけのアルバムだ。
その昔、昭和の銭湯には「電気風呂」というものがあったけれども、あれのもっと激しいやつに浸かっているみたいな気分になれる。大音量で聴けば、全身がピリピリして筋肉が収縮し、多幸感に包まれて、なんだか少しだけ気が遠くなったりもする。
当時は”ニューヨーク・アンダーグラウンドの帝王”とも評されたソニック・ユースのインディーズ時代最後のアルバムである。その集大成にふさわしく、アナログ盤2枚組70分の大容量で、1988年10月にリリースされた。
そしてそれはまた、1960年代にヴェルヴェット・アンダーグラウンドが登場し、70年代にはN.Y.パンクが隆盛を極めた、N.Y.アンダーグラウンド・シーンの有終の美を飾る作品にもなった。本作をソニック・ユースの最高傑作に挙げる人も多い。
【オリジナルCD収録曲】
1 Teen Age Riot
2 Silver Rocket
3 Sprawl
4 ‘Cross the Breeze
5 Eric’s Trip
6 Total Trash
7 Hey Joni
8 Providence
9 Candle
10 Rain King
11 Kissability
12 Triology: A) the Wonder
13 Triology: B) Hyperstation
14 Triology: Z) Eliminator JR
ソニック・ユースの代表曲のひとつとして知られるオープニング・トラック、「ティーンエイジ・ライオット」は、当時のオルタナティヴ・ロック系のラジオでヘヴィロテとなり、彼らの名を一気に広めた。ソニック・ユース流のパンク・ロックであり、そのタイトルからなんとなくアンダートーンズの「ティーンエイジ・キックス」を連想しなくもないが、あっちが懐かしの屋台の味のラーメンなら、こっちは激辛ラーメンぐらいの違いはある。
アルバムを通して奏でられる、2本の変態チューニングのギターの不協和音とノイズはときに汚く、ときに美しく、闇雲な疾走感も爽快だ。
有り余るエネルギーを攻撃的に、破壊的に撒き散らすようでありながら、しかしときには詩情が漂う、魂に共鳴するような幽玄な響きを味わえるのはソニック・ユースならではだろう。ギターとベースとドラムと声だけで、この豊かな表現力。ロックのさらなる可能性を追求する実験工房のようでもある。
パンクで、アートで、アヴァンギャルドで、インテリジェント。永遠の芸大生みたいな連中だったけれども、カッコ良くて憧れたな。
↓ 米オルタナ・チャートの20位まで上昇し、彼らの名前を広めることになった代表曲「Teen Age Riot」。
↓ アルバムからの2枚目のシングル・カットとなった「Silver Rocket」。
(Goro)