スライ&ザ・ファミリー・ストーンは、米サンフランシスコで結成され、黒人、白人、男女混成のグループで1967年にデビューした。
曲はすべてリーダーのスライ・ストーンが書き、その楽曲は、ロック、ソウル、ファンク、サイケデリック、ポップ、ダンスなど様々な要素をミックスした、史上初のミクスチャー・ロックだった。スライは、60年代にジミ・ヘンドリックスと並んで最もロックに革命的な影響を与えた黒人アーティストと言っても過言ではない。
全米ナンバー1シングルを連発し、1969年のウッドストック・フェスティヴァルでのアグレッシヴなパフォーマンスと観客の熱狂は記録映画のハイライトとなるほど、他を圧倒するものだった。
そして1971年にはロックとファンクを融合させたディープなサウンドの唯一無比の傑作アルバム『暴動(There’s a Riot Goin’ On)』を発表した。このアルバムはとにかく凄い。
しかし1974年頃から人気は急落し、スライの薬物中毒による人格荒廃やメンバーとの不和で、自らグループを崩壊させ、栄光の日々は短命なものに終わってしまった。
それでも、スライ・ストーンがミクスチャー・ロックという大発明でロックの新しい扉を開き、その影響は今も続いていることを忘れてはならない。
彼はロック史上でも、真に人種の壁を超えることができた数少ないアーティストのひとりだ。
以下は、わたしが愛するスライ&ザ・ファミリー・ストーンの至極の名曲ベスト5です。
Everyday People
後に4thアルバム『スタンド!(Stand!)』に収録された5枚目のシングルで、初の全米1位となった出世作。
互いに多様性を認め合おうという意味で、「人間いろいろ、やり方もいろいろ」(Different strokes for different folks)」と歌い、当時の自由・平等を標榜したカウンター・カルチャーを背景に、若者たちの共感を得た。
また、ベーシストのラリー・グラハムによる、史上初めてエレキ・ベースのスラップ奏法が録音された曲とされている。
Thank You(Falettinme Be Mice Elf Agin)
1969年12月に発表され、全米1位となった大ヒットシングル。
サブタイトルは変な綴りになっているが「わたしを再びわたし自身に戻らせてくれたことに感謝したい(Thank you for letting me be myself again)」ということらしい。
ファンカデリックなどにも影響を与えたと思われる、ゴリゴリのファンク・サウンドがカッコいい。
If You Want Me to Stay
スライ・ストーンがおよそ2年をかけて制作した6thアルバム『フレッシュ(Flesh)』からのシングルで、全米12位のヒットとなった。
当時、妻以外にも子供を産ませたりしていたスライが、愛人に別れを告げることへの複雑な胸の内を歌った、ファンキーなラヴ・バラードだ。
私生活も音楽もファンキーなスライだけど、こんな美しい曲を書くのだからさすがとしか言いようがない。
Family Affair
ブーツィー・コリンズもフェイヴァリット・アルバムに挙げる名盤『暴動(There’s a Riot Goin’ On)』は、スタジオにこもったスライが長い時間をかけ、大半は自身で演奏して作ったアルバムだ。10年後にプリンスがやるようなことを、スライはすでにやっていたということになる。
まるで後のヒップホップのようにも聴こえるこの異様に斬新なサウンドの曲はその『暴動』からのシングルで、全米1位の大ヒットとなった。
I Want to Take You Higher
4thアルバム『スタンド!(Stand!)』収録曲。ウッドストック・フェスティヴァルの記録映画にこの曲の演奏シーンが出てくるが、熱狂の渦という表現はこのことかと思うほど、全編中でも間違いなく観客が最高潮に盛りあがっている印象的なシーンだった。
ウッドストックでの演奏はアレンジがまったく違うが、この遅めのテンポのオリジナルも最高だ。重心の低い不穏なグルーヴがたまらない。
以上、スライ&ザ・ファミリー・ストーン【名曲ベスト5】SLY & THE FAMILY STONE Greatest 5 Songsでした。
入門用にスライ&ザ・ファミリー・ストーンのアルバムを最初に聴くなら、ベスト盤もいいけれど、やはり彼らの真髄であり、ミクスチャー・ロックの先駆者としての歴史的名盤『暴動(There’s a Riot Goin’ On)』を聴いて彼らの真価を知ってほしいと思います。
(Goro)