スライ&ザ・ファミリー・ストーン『暴動』(1971)【最強ロック名盤500】#172

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【最強ロック名盤500】#172
Sly & The Family Stone
“There’s a Riot Goin’ On” (1971)

星条旗を模したジャケに『暴動』などという不穏なタイトルなので、さぞや激しくて騒がしくて攻撃的な内容かと思いきや、聴いてみると、なんか思ってたのとは違う感じなのである。

不穏な緊張感は確かにあるものの、特に政治的なことや暴動的なことが直接歌われているわけでもない。全体にインスト部分が多く、リズム・ボックスが使用され、オーバー・ダビングが多用されるなど、実験的で非現実的なサウンドの印象も強い。賑やかな歌とヒット曲満載の前作『スタンド!』と同じグループのアルバムとは思えないほどである。

ファンク要素濃いめのミクスチャー・ロックとしてまさに画期的な作品ではあるが、同時に異様にクールなアルバムでもある。そしてそれがどこまで意図されたものかもわからない。

本作の完成は予定より1年以上も遅れ、レコード会社を悩ませたが、それはバンドが内部崩壊を始めたせいだった。

前作までの商業的な大成功によって浮き足だったバンドのメンバーは、パーティーに明け暮れ、コカインやPCPといったドラッグに溺れた。

中でもスライ・ストーンは、新譜を要求するレコード会社からのプレッシャーや、ブラックパンサーからの脅迫(「白人のメンバーやスタッフを追い出せ」など)に悩んでいたこともあってか、人格荒廃に至るほどの中毒症状だったという。

スライはどこへ行くにもドラッグを詰めたヴァイオリンケースを持ち歩き、コンサートの3分の1をすっぽかしていた。さらにドラッグの調達役兼ボディガードとしてマフィアを雇い、一部のメンバーやスタッフを敵とみなすようになり、内部の人間関係を悪化させ、脱退するメンバーも出始めた。

本作の制作過程でも、メンバーたちが一緒に演奏することを拒否したため、彼らに個別に演奏させ、スライがそれを編集した。スライはまた、ヴォーカル、ベース、キーボード、リズムボックスなど様々な楽器をひとりで演奏した。
本作にそれまでのロックとは違う画期的な新しさがあると同時に異様なヤバさを感じるのは、そこはかとなくシラフではない感じが漂うからだ。スライはスタジオにベッドを持ち込んで寝転んで歌を入れたりもしたという。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 ラヴン・ヘイト
2 子供のように
3 ポエット
4 ファミリー・アフェア
5 アフリカは君に語りかける (アスファルト・ジャングル)
6 暴動

SIDE B

1 ブレイヴ&ストロング
2 スマイリン
3 タイム
4 スペース・カウボーイ
5 ランニン・アウェイ
6 サンキュー・フォー・トーキン・トゥ・ミー、アフリカ

本作は1971年11月にリリースされ、全米1位という過去最高のセールスを記録した。
シングルカットされた「ファミリー・アフェア」も、全米1位の大ヒットとなった。

本作の顔とも言える「ファミリー・アフェア」は、くぐもった不穏な音と怪しげなグルーヴ感がたまらない。
「勉強して立派な大人になる子供もいれば、火をつけて燃やしてしまいたくなるような大人になる子供もいる、それも家庭の事情」などと恐ろしいことも歌われている。

この曲にファミリー・ストーンのメンバーは録音に加わっておらず、ベースをスライが弾き、ドラムはリズムボックス、ギターはボビー・ウーマック、ヴォーカルはスライとその妹のローズだ。何重にもダビングしているのでノイズが多く、音もこもった感じに聴こえるのだけど、それが不穏な空気を醸し出して、カッコいい。

他にも、妙にクールな明るさが面白い「ランニン・アウェイ」も良いし、ブリンブリンと唸るベースがカッコいい、ラストの「サンキュー・フォー・トーキン・トゥ・ミー、アフリカ」も好きだ。

タイトル曲のはずのA6「暴動」は、曲が存在しない。無音で、0.00秒の曲である。後年、スライがインタビューで「暴動なんて起きてほしくないから、ゼロにしたんだ」と語っているが、まあ、なんだかよくわからない。

当時のスライ&ザ・ファミリー・ストーンは、ライヴにスライをはじめ、メンバーが揃わなかったり、途中で帰ったり、薬物を使用してぶっ倒れたり、バンドそのものが現れなかったりして、よく観客が暴動を起こしていたという。

その暴動のことかもしれないと思う。

↓ 全米1位の大ヒットとなった「ファミリー・アフェア」。

↓ 2ndシングルとしてリリースされ、全米23位のヒットとなった「ランニン・アウェイ」。

(Goro)

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