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『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』(1987米)
“Sign ‘o’ the Times”
監督:プリンス
出演:ブリンス、シーラ・E、他
1987年に公開された、プリンスの3作目の映画『サイン・オブ・ザ・タイムズ』が、IMAXレーザーとかいうシステムの劇場で上映されるということで、観に行ってきた。
IMAXレーザーとは、公式ページの説明によれば、
革新的な4Kレーザー投影システムと最新の12Chサウンドシステムを採用し(中略)IMAX®ならではの大スクリーンに映し出される鮮明な映像とパワフルな高音質サウンド。これらが生み出すかつてない臨場感が客席を包み、観る者を映画の中へと導きます。
ということらしい。
まあ、技術的なことはよくわからないが、要するに、スクリーンがでっかくて、音もでっかい、というところだろう。
IMAXレーザーも初めてだが、この映画自体もわたしは初めて観る。
実は半年ぐらい前からわたしは、プリンスの全アルバムを発表順に聴き辿り、現在その半ばである。若い頃はそれほどでもなかったのに、今になってプリンスの音楽のクールな面白さを再発見しているところなのだ。なので今回のこの再上映は、わたしにとってはドンピシャのタイミングだった。
1987年3月にリリースされたプリンス9枚目のアルバム『サイン・オブ・ザ・タイムズ』の楽曲を中心にしたライヴ映画で、一応ストーリー仕立てにはなっているようだけれども、お芝居部分は1割、ライヴ・シーンが9割という嬉しい構成だ。日本語字幕も無いので、お芝居部分の会話は何を言ってるのかわからないが、まあわたしはライヴ・シーンにしか興味はないので、別に構わない。
わたしにとっての最大の興味は、ザ・レヴォリューションを解散したプリンスが一人でスタジオにこもって楽器や電子機器を取っ替え引っ替えしながらネチネチと作り上げたようなあのサウンドが、いったいライヴでどんな風に再現されるのだろうというものだった。
しかし映画のライヴ演奏は、予想を遥かに超える、激アツだった。
クールなチマチマした演奏ではなく、推進力とスピード感があり、プリンスもバンドも、汗を飛び散らせ、身体から湯気を吹き上げながら、豪快な音を出す激しい演奏だった。それはもう、呆気に取られるほど凄いものだった。
ジミ・ヘンドリックスのようにギターを弾きながらマイケル・ジャクソンのようにキレッキレのダンスを踊り、様々な歌声を使い分け、ときに絶叫し、ステージを駆け回り、キーボードを弾き、ドラムを叩き、ダンサーとセックスの真似事までする。やっぱりこの男は、天才的な音楽家であると同時に、史上最高のパフォーマーと言えるのではないかと、あらためて畏敬の念を感じたほどだ。こんな超人みたいな男が他にいただろうかと考えても、大谷翔平ぐらいしか思いつかない。
バンドのメンバーは演奏もダンスも達者で個性も強烈な曲者揃いだったが、プリンスの当時の恋人であるシーラ・Eの存在感はまた別格だった。やっぱりスタイル抜群の美人が力の限りに叩きまくる激しいドラム演奏というのは、いろんな意味で、見ていられるものだ。
特別料金にIMAXレーザーの別料金も上乗せされて2,900円という料金は、映画代にしてはまあ高く感じるけれども、プリンスの実際のライヴを一度も観ることができなかったわたしにとっては、IMAXレーザーの、頭から降り注ぎ腹にドカンドカンと来る爆音の洪水で、殿下のライヴを体験した気分にはなれたので、それを思えばそんなに高くもない。
しかし日が経つにつれ、しまったなあ、やっぱり本物のライヴを観てみたかったなあという、今更どうにもならない悔しい思いが膨れ上がってくるのである。
(Goro)
