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“Sid and Nancy”
監督:アレックス・コックス
出演:ゲイリー・オールドマン、クロエ・ウェッブ
音楽:ジョー・ストラマー
「美しいまでに破滅的な恋人たちを描いたパンク・ムービーの金字塔」というキャッチコピーは、いくらなんでも自己評価が過大すぎるだろう。誇大広告だ。
たしかに主演の2人は上手く演じているし、腕のある監督だとは思うけれども、結局この映画からわたしはなんの感銘も受けず、退屈とげんなりしか感じなかった。
「おまえには、破天荒なパンク・ロッカーのカッコ良さがわからんのだ!」と言われれば、もうそれは反論しないけれども。
今のロック好きの若者たちがセックス・ピストルズをどう思っているのかまったく想像もつかないけれど、なにかシド・ヴィシャスをピストルズやパンクのシンボルみたいに思うような勘違いだけはしてないといいが、とは思う。
「友達だから」という理由でピストルズに入れたジョニー・ロットンも悪いけれど、結局シドはベースもろくに弾けないし、作品を書いたわけでもなく、バンドになにも貢献していないし、むしろ解散を早めた大きな要因ともなった、ただただピストルズの足を引っ張ったジャンキーに過ぎなかったのだ。
シドとナンシーという2人のジャンキーの幼稚でみっともない戯れを描いた映画で、まあ映画なんていうものは美化するのも創造のうちだからそれはいいのだけれど、それならあそこに出てくるセックス・ピストルズももっと美化してくれよ、と頼みたいものだ。
似てればいいってもんでもないし、似てなくてもいい場合もあるけれど、このセックス・ピストルズぐらいなんだか腹立たしくなるものはない。
全然似てなくてもいいので、せめて、ピストルズを知らない少年たちが見て「カッコいいバンドだな」と思えるぐらいならいいのだけれど、思うかなあ、これで。
(Goro)