世界を震撼させた地上最強のロック・アルバム 〜セックス・ピストルズ『勝手にしやがれ!』(1977)【最強ロック名盤500】#248

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【最強ロック名盤500】#248
Sex Pistols
“Never Mind The Bollocks” (1977)  

このアルバムが発表された1977年10月、わたしは11歳になったばかりだった。セックス・ピストルズのことなど知るわけもなく、沢田研二のほうの「勝手にしやがれ」に夢中だった。

本作を初めて聴いたのは二十歳を過ぎた頃だったと思う。

わたしがそれまで好きで聴いていた60〜70年代の英米のロックは、あくまでその父と母であるブルースやカントリーにこだわっていたのに対し、セックス・ピストルズの音楽にはそういった匂いもコンプレックスも一切感じられなかったのが新鮮だった。

そこには気取ったインテリジェンスも、熟練の技術も無かった。代わりにあるのはユーモアのセンスとわかりやすいメロディーと、重量感もありながらどこか爽快なサウンドだった。

決して余計なことをしないドラム、エレキギターの痛快な轟音、原付エンジンのようなベース、ギャグマンガのように自由なヴォーカルである。その潔さは美しいほどで、迷いが一切なかった。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 さらばベルリンの陽
2 ボディーズ
3 分かってたまるか
4 ライアー
5 ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン
6 怒りの日

SIDE B

1 セブンティーン
2 アナーキー・イン・ザ・U.K.
3 サブミッション
4 プリティ・ヴェイカント
5 ニューヨーク
6 拝啓EMI殿

ちょうど本作の1年前にシングル「アナーキー・イン・ザ・U.K」でピストルズはデビューし、その衝撃的な音楽性に加えて過激な言動や様々な事件など話題にも事欠かず、英国パンク・ムーヴメントの牽引的存在だったのだけれども、やっとのことでアルバムがリリースされたのが1977年10月28日と遅れに遅れたのは、レコード会社との度重なるトラブルのせいでもあった。

「アナーキー・イン・ザ・U.K」をリリースしたEMIは、ピストルズがテレビ出演した際に放送禁止用語を連発したことを問題視して契約を破棄した。次に契約したA&Mは、2ndシングルとして彼らが録音した「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」の内容に恐れをなしてわずか数日で契約を破棄し、ピストルズは巨額の違約金を手にした。そして最終的に、ヴァージン・レコードと契約し、アルバムを制作する見通しが立ったのだった。

しかしその後、バンドのソングライターでもあったベーシストのグレン・マトロックが脱退、「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」の、テムズ川におけるゲリラ・ライヴでバンドが逮捕され、またジョニー・ロットンとポール・クックは右翼の暴漢に襲われて怪我を負うなどトラブル続きだったこともあり、アルバム制作はさらに遅れることになった。

そして、1977年というパンク・ムーヴメントの年を締めくくるように、真打ち登場!という感じでリリースされたのが本作だった。

なかなか出ないアルバムには、シーンの注目と期待感は否が応でも高まり、ハードルは上がりに上がっていたはずだ。そんな中でリリースされた本作は、しかしその期待値を遥かに上回ったに違いない。

この奇跡のようなサウンドには、敏腕プロデューサーのクリス・トーマスの手腕に拠るところも大きい。彼は音に厚みを出すためにギターの音を何重にも重ねたり、実際の演奏よりやや速めに再生されるように録音したという。

満を持してリリースされたアルバムは、全英1位の大ヒットとなった。

今回久々に、何年ぶりかに聴いたけれども、幾つになってもやっぱり気分が高揚してくる。まるで、しばらく便秘だったのが久しぶりにドッカンドッカン出たみたいな、爽快な気分だ。

初めて聴いてから40年近くが経ち、その間にわたしは何千というロックのアルバムを聴いてきたにも関わらず、今だにそう思うのである。

いや、若い頃に夢中で聴いていた頃より、今のほうがもっと確信を持って言える。

あらゆる意味において、最も完璧なロック・アルバムである。

↓ デビュー・シングルとなった「アナーキー・イン・ザ・U.K」

↓ 2ndシングルとしてリリースされ、全英2位の大ヒットとなった「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」。

(Goro)

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