サム・クックは、わたしが十代の頃に最初に知ったソウル・シンガーだ。
そして、今でもいちばん好きなソウル・シンガーである。
その色気と気品に溢れ、同時に少年のようにピュアでもある声は、ヴォーカリストとして唯一無比であり、またソングライターとしても素晴らしい才能を兼ね備えている。
ミシシッピ州クラークスデイル出身、1957年に26歳でデビューし、1964年に非業の死を遂げるまで、たった7年間の活動ながら、全米チャート上位を何度も獲得した。
白人社会にも受け入れられ、サザン・ソウル(ディープ・ソウルとも呼ばれる)の源流を生み出し、ロックにも多大な影響を与えた。
以下は、わたくしゴローが愛するサム・クックの至極の名曲ベスト5です。
Chain Gang
全米2位となった大ヒット曲。
「チェイン・ギャング」とは50年代当時、ボーダーの囚人服を着せられて足に鎖を付けられ、土木作業などの重労働をさせられていた囚人たちのことだ。
イントロに出てくる「ウッ!ハッ!」というのは作業中の掛け声を模したもので、ハンマーかツルハシかを叩きつけるような「キンッ!」という金属音も聴こえてくる。
歌詞は、誰かを批判したものでも同情するものでもなく、ただ囚人たちの過酷な労働の様を描写しているだけだが、「なにかが間違っている」という深い思索が感じられる。
A Change Is Gonna Come
サム・クックの死の11日後に発売され、全米7位のヒットとなったシングル「シェイク」のB面として発表された曲。現在ではこの曲のほうが有名になっている。
1963年、サム・クックとバンドのメンバーたちがルイジアナ州のホテルに泊まろうとしたところ、そのホテルが白人専用ホテルだったことから、彼らは逮捕された。その経験をきっかけに、この歌を書き「いつかきっと変わるときが来る」と歌っている。
この歌はサム・クック自身も積極的に関わった、60年代の公民権運動のアンセムとなった。
You Send Me
サム・クックのデビュー曲で、いきなり全米1位に輝いた代表曲。
シンプルな歌詞が、それにふさわしい甘くロマンティックなメロディで、気品溢れる声で歌われる。この歌だけは、サム・クックの声以外では聴きたくない。
シンプルだからこそ、時代が変わってもその価値や魅力が変わらない、永久不滅の名曲だ。
Wonderful World
キャッチーなメロディとアコースティック楽器だけのシンプルなアレンジが素晴らしいが、ユーモアと深い意味が同居する歌詞もまた魅力的だ。
歴史のことなんかよく知らない
生物学も科学もよくわからないし
専攻したフランス語も覚えられないでも君を愛していることは知ってるんだ
君も僕を愛しているならどんなに素敵な世界になるだろう(written by Lou Adler, Herb Alpert, Sam Cooke)
黒人も懸命に勉強して立派な人間にならなければいけない、というメッセージも含まれているのだろう。
歌詞に出てくる「君」が白人の女の子だとすれば、そんなふたりが愛し合うことができるとしたらなんて素晴らしい世界なんだろう、と歌っているのかもしれない。
Bring It On Home to Me
去っていった恋人に、「おれのところに戻ってきてくれよ~」と切々と歌うラブソングだが、哀愁たっぷりのメロディやストリングスが素晴らしい。泣かせる。
またなぜか、最初から最後までルー・ロウルズと2人で歌っているのもグッとくる。
このバック・ヴォーカルがなければ、これほどまでの哀愁と深み、感動は生まれていなかったかもしれない。
以上、サム・クック【名曲ベスト5】でした。
(Goro)