儚くきらめく青春の轟音ギター 〜ライド『スマイル』(1990)【最強ロック名盤500】#19

スマイル

⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#19
Ride
“Smile” (1990)

英オックスフォード出身のライドは、1990年1月に4曲入りEP『RIDE』(全英71位)でデビュー、そして4月には2枚目の4曲入りEP『Play』をリリースした。その2枚のEP、全8曲31分を収録したのが本作である。わたしが初めて聴いたライドだ。

それはもう、鳥肌が立つほど衝撃的だった。

若者特有のフラストレーションを全放射するかのように、力任せに大音量でギターをかきならす。歌メロはシンプル極まりないけど、なぜかポジティヴなエネルギーに溢れていて、夢にときめき明日にきらめく「青春」の香りが濃厚に立ちのぼる。

それまでは、歪んだ音のギターをやかましく鳴らすバンドなんてのはだいたいが悪者風かネガティヴなやつだった。ストゥージズとか。MC5とか。セックス・ピストルズとか。ジーザス&メリー・チェインとか。

しかしライドのお坊ちゃんたちは、轟音ギターをかき鳴らし汚いノイズを撒き散らしながらも、爽快この上ないポジティヴな新しいロックを創り出した。しかも、プロフェッショナルに作り込まれたような養殖ロックではない、天然のロックを。

若くて、未熟で、無垢で、だから怖いものなし、それが音楽からあふれ出ていて、その全部が眩しいほど魅力的に思えたものだ。ここに収録された「Chelsea Girl」や「Like a Daydream」といった曲はまさに「初期衝動」という言葉がよく似合う。

本作は1990年7月にリリースされた。
その3ヶ月後の10月には、ライドの正式な1stアルバム『Nowhere』がリリースされたが、実を言うとこれには大いにガッカリしたものだ。

「Chelsea Girl」や「Like a Daydream」のような前のめりに疾走するような楽曲などまるで無く、避暑地のハンモックでうたた寝でもしているようなフワフワしたドリーミィな曲ばかりで、大いに失望させられたものだった。

確かにフワフワ系は本作にも入っているけれど、わたしが聴きたかった路線はそっちじゃないんだよなあ、というすれ違いによる失望感だった。

なので「ライドの1枚」となるといつもわたしはこの、正式なフルアルバムでもない、本作を選んでしまうのである。

↓ デビュー・シングル「チェルシー・ガール」。

Ride – Chelsea Girl

↓ 必殺の大名曲「ライク・ア・デイドリーム」。

Ride – Like A Daydream

(Goro)