アメリカン・ロックの正しき継承者 〜 R.E.M.『エポニマス』(1988)【最強ロック名盤500】#9

EPONYMOUS [12 inch Analog]

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#9
R.E.M.
“Eponymous” (1988)

一聴しただけではピンとこない音楽というものがあるもので、この当時のR.E.M.こそがわたしにとってはその代表的なものだった。

わたしが音楽を聴きあさった若いころは、毎月まとめて10枚ぐらいのCDを一気買いしてオーディオラックの上に積み、1ヶ月の間、それをとにかく順番に聴いて10周するということをやっていたものだ。

たとえ一聴して気に入ったCDがあったとしても、そればかり繰り返し聴くことは決してしない。逆に、あまりピンと来ないCDでも同じように、10回は我慢してでも聴く。

そういう聴きかたをすることによって、一聴して気に入ったと思ったCDでも10回聴くころには飽きてしまったりもする。逆に最初はピンと来なかったけど10回聴くうちにじわりじわりとその良さがわかってきたりという経験をしながら、真の愛聴盤を見つけていったものだ。

本作はそのピンと来ない方のやつだったわけだけれど、それがわたしのR.E.M.との出会いである。第一印象はかなりイマイチだったのである。

ラウドでもなければ、メロディがとくに印象的なわけでもなく、あまり刺激的ではない軽めのサウンドで、派手でもなければダークでもない、はたまたシブいというほどでもなく、ヴォーカルの声に少し特徴があること意外は、可もなく不可もなくといった感じだった。

R.E.M. – Talk About The Passion

ピンと来ないと思いながらも、自分で作った10回ルールに則って、順番が来るたびに繰り返し聴いた。すると次第に、この軽めのシンプルなサウンド、シンプルなメロディがなによりも心地よく、耳に残るように思えてきたのだ。

ラウドな音楽やクセが強い音楽を聴くのがしんどいとき、「ごく普通のロック」が聴きたいときにはちょうど良かった。
「ごく普通のロック」が聴きたいと思ったときにぴったりの音楽って、実は意外と少なかったりするものだ。そしていつのまにかR.E.M.の本作は、かなりの頻度で聴く愛聴盤になっていった。そこまでたどり着いたのはたぶん、CDを買って、10年後ぐらいだったと思うけれども。

本作は、彼らがインディ・レーベルのIRSからメジャーのワーナー・ブラザーズに移籍した直後に、IRS時代の集大成として1988年10月にリリースされたベスト・アルバムである。R.E.M.の世界的な快進撃はこの直後から始まる。

R.E.M.は、ザ・バーズ以来綿々と続いてきた真の王道アメリカン・ロックの継承者だ。
久しぶりに聴いてみたら、やっぱりすごく良い。昔聴いてた頃よりも、今のほうがもっと良く聴こえる。「ごく普通のロック」などという単純なものではなく、その独創性も今ならよくわかる。

R.E.M. – It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)

(Goro)