Radio Free Europe (1981)
米ジョージア州出身のバンド、R.E.M.が1981年7月に独立系レーベルからリリースしたデビュー・シングルだ。そのレーベルがほどなくして廃業したため、別の独立系レーベル、IRSに移籍し、83年に1stアルバム『マー・マー』に収録された。
1960年代にバーズやボブ・ディランが創造したフォーク・ロックやカントリー・ロックのようでもある。そんな、アメリカン・ロックの原点に立ち還ったようなシンプルなサウンドと、ポップとシリアスをバランス良く併せ持った楽曲、マイケル・スタイプの一度聴いたら忘れられない声がR.E.M.の魅力だ。
わたしがR.E.M.を知ったのは1980年代の終わり頃のことである。正直、たまに聴く程度だった。主食ではなかった。それよりももっと刺激的で、度肝を抜くような轟音ギター・ロックにシビれていたのだ。それにくらべるとR.E.M.はやや刺激の弱い、フツーの音楽だったのだ。
でも、刺激にはいつか慣れるし、飽きるものだ。
あっちもこっちも轟音ギターで、さすがに飽きて来た頃、いつの間にかR.E.M.を聴くローテーションが早くなっていた。
R.E.M.の音楽は、日常の音楽だ。
料理を作ったり、掃除をしたり、ドライヴをしたり、昼寝をしながら聴くのにちょうどいい。眠れない夜に聴くのにぴったりな曲もある。ちょうど古いカントリーやブルースがそうだったように。
1990年代前半の轟音ギター・ロックのブームは、激辛料理ブームみたいなものだったのかもしれない。辛さだけを追求した、味は二の次でひたすら唐辛子を山盛りに乗せただけのような料理のように、ひたすら轟音の音圧だけを競い合うような、音楽の味わいもへったくれもないおかしな方向へとエスカレートしていったので、やがてわたしは降りた。1996年頃のことである。
そしてご飯と味噌汁とサバの塩焼きみたいな、R.E.M.定食を好むようになったのだ。
斬新なものも良いし、変態なものも好きだけれども、「やっぱり普通がいちばん」と思うときもあるものだ。でも意外とその「普通のロック」がなかなか見つからなかったりする。
R.E.M.はそんなときに聴きたくなる、日常生活にもよく合う「普通のロック」だ。
この「レディオ・フリー・ヨーロッパ」には、1981年という時代のせいか、ちょっとポスト・パンクやニュー・ウェイヴの疾走感やテイストも感じられる。
デビュー・シングルながら、ニューヨーク・タイムス紙の「1981年の10枚のシングル」に選ばれるなど、高い評価を得た。
動画は、みんな若いし、溌剌としていてカッコいい。
ヴォーカルのマイケル・スタイプの髪の毛も、たっぷりある。
※この記事は2020年6月に公開された記事を基に加筆・修正したものです。
(Goro)