⭐️⭐️⭐️
R.E.M.
“Green” (1988)
MTVと電子楽器全盛の80年代に、流行の真逆をいく音楽性で「米インディーズ界の良心」と評されたR.E.M.の、メジャー移籍第一弾だ。
もともとR.E.M.はジョージア州のアセンズという、ジョージア大学がある学園都市の出身ということもあり、インディーズ時代から学生たちの圧倒的な支持を得ていた。
アメリカには各大学の学生たちが運営するFMラジオ局が多数存在し、彼らが好きな音楽を流しているらしいのだけれど、その各大学のチャートをまとめたのが「CMJ (カレッジ・ミュージック・ジャーナル) チャート」だ。クロスビート誌に毎月そのチャートが載っていて、わたしも随分CD購入の参考にしたものだった。
そのCMJチャートで当時人気を博していたのが、英国のバンドではザ・スミス、米国のバンドではこのR.E.M.だった。彼らが世界的に評価されていくと共に、CMJチャートとそこで人気を博しているインディ系のオルタナティヴ・ロックにも注目が集まり出した。これが90年代のオルタナティヴ・ロック・ムーヴメントの下地になったのは間違いない。
インディ界の人気者がメジャーに移籍となれば賛否両論が巻き起こるのは必至のはずだったが、当時R.E.M.が批判されたという記憶はまったくない。むしろ本作は絶賛の嵐だった。
メジャーに移籍して変わったことは、よりパワフルになったことぐらいだ。彼らの芯となるバーズやディランが創造したフォーク・ロックと、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドが創造したオルタナティヴ・ロックという、表と裏、光と闇の両面を併せ持った、アメリカン・ロックの真の継承者と言うべき音楽性はまったくブレることなく、商業主義的な妥協もまったく感じられなかった。
90年代に入るとR.E.M.は世界的な人気を博すビッグバンドになったが、ただし当時のわたしはそれほど熱中したわけではなかった。
当時20代前半の血気盛んなわたしは、もっと極端にうるさい轟音ギターロックとか、刺激多めの激辛料理みたいなロックが好みだったので、伝統的な素材の味を生かした郷土料理のようなR.E.M.は若干食い足りなかったのである。
しかし現在は、R.E.M.は80〜90年代のバンドの中では特に好んでよく聴くバンドのひとつだ。本作はポップな曲も良いが、内省的な曲にまた深い味わいがあり、特に好きなアルバムのひとつだ。
R.E.M.にとって通算6枚目となるアルバム『グリーン』は1988年11月にリリースされた。
アルバムは全米12位のヒットとなり、シングルカットされた「スタンド」は彼らにとって過去最高となる、全米チャート6位まで上昇する大ヒットとなった。
(Goro)