Radiohead
“OK Computer” (1997)
90年代も後半になって、オルタナブームも終わり、ブリット・ポップ・ブームも沈静化し、あーもーすっかりみんないなくなったなー、なんて思っていたロックシーンの荒地にまだポツンと居残っていたのがこのレディオヘッドだった。
わたしはもう30歳になっていて、レディオヘッドのことなんかすっかり忘れていた。なので本作が話題になっていても、正直「あ、まだいたんだ」ぐらいの印象だった。
しかし30歳のわたしがありとあらゆることに失敗し、職も失い、彼女にも愛想を尽かされ、ロックどころではなくなっていた間に、やつらの3rdアルバム『OKコンピューター』は全英1位になったうえに、なんだかロック好きをザワつかせ、音楽雑誌では絶賛の嵐が尋常じゃないようなので、おいおいいったいなにごとですか、という感じであわてて聴いてみたのだった。そしてわたしは驚愕した。
ああっ。
プログレになったのか。
いや、真っ先にピンク・フロイドの『狂気』をわたしは思い出したのだ。別に音楽的に似ているというわけではないけれども、なんとなく、レディオヘッドが発狂したかのように思ってしまったのかもしれない。
まるで、自閉的な引きこもりのためのサウンドトラックみたいだった。
生身の人間とのコミュニケーションを避け、ネットで思いのたけを吐き出す、世の中のすべてに噛みつき、無駄吠えを止められない負け犬のためのレクイエムのようでもあった。
さらには、社会から滑り落ち、やがてやってくるだろう破滅の足音に震えながら、消費者金融をハシゴして生活していた当時のわたしのための葬送行進曲のようでもあった。
本作はレディオヘッドの3rdアルバムとして、1997年5月になぜか日本で先行発売された。そして6月にイギリスで、7月にアメリカで発売された。
【オリジナルCD収録曲】
1 エアーバッグ
2 パラノイド・アンドロイド
3 サブタレニアン・ホームシック・エイリアン
4 エグジット・ミュージック(フォー・ア・フィルム)
5 レット・ダウン006. カーマ・ポリス
6 フィッター、ハッピアー
7 エレクショネアリング
8 クライミング・アップ・ザ・ウォール
9 ノー・サプライゼス
10 ラッキー
11 ザ・ツーリスト
アルバムは全英1位、全米21位、日本でもオリコン総合16位と世界的なヒットとなり、800万枚を売り上げた。
内容にもびっくりしたが、これがバカ売れしているというので二度びっくりしたものだ。
ロックの突然変異的な進化を目の当たりにしたような気分だった。
まるでギーガーのエイリアンみたいな、グロテスクで恐ろしい異形の姿なのに、しかし同時にそのクールな造形の異様な美しさに惚れ惚れしてしまうのであった。
そしてこれが、ロックの歴史と進化の道のりにおける、哀しいけれども、最後に辿り着いた姿のようにも思えた。
↓ シングル・カットされて全英シングルチャートで3位と、彼らのシングルとしては最高位を記録した「パラノイド・アンドロイド」。よくまあこんなややこしいものがヒットしたものだ。
↓ 全英8位のヒットとなった「カーマ・ポリス」。歌詞には深い意味はないらしいが、曲には緊張感が漲り、まるで黄泉の国から聴こえてくるような幽玄で美しい曲だ。
(Goro)

