Prince
“Purple Rain” (1984)
プリンスはわたしの最も好きなアーティストのひとり、ではなかったけれども、最も気になるアーティストのひとりではあり続けた。
すべてが謎めいていて、決して本性を明かさない男だ。
音楽スタイルも、ロックなのかファンクなのかエレクトロ・ポップなのか、それとも前衛なのか、どれにでもあてはまる要素はあるのに、どれでもない。それでも彼の音楽は一貫してユニークで、その斬新な響きに魅せられる。
当時からよくマイケル・ジャクソンと比較されたものだけれども、わたしはマイケルには一度も興味を惹かれたことがない。どちらも超のつく天才でありながら、わたしがプリンスだけに惹かれるのは、彼の音楽にはわたしが好む三つの要素「ダーク」「変態」「偏執狂」が常に見え隠れしているからだろう。
本作は、プリンス自身が主演を務めた自伝的音楽映画のサウンドトラックとして制作された。映画の公開よりも1ヶ月先駆けて、1984年6月にリリースされている。
それまでのエレクトロ・ファンク路線だけでなく、自身のバンド「ザ・レヴォリューションズ」を従えてエレキギターを弾きまくる、ロック的な要素がより濃くなった。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 レッツ・ゴー・クレイジー(全米1位、全英7位)
2 テイク・ミー・ウィズ・ユー(全米25位、全英7位)
3 ビューティフル・ワン
4 コンピューター・ブルー
5 ダーリン・ニッキー
SIDEb B
1 ビートに抱かれて(全米1位、全英4位)
2 ダイ・フォー・ユー(全米8位)
3 ベイビー・アイム・ア・スター
4 パープル・レイン(全米2位、全英6位)
5曲のシングル・ヒットが生まれ、アルバムは24週連続で全米1位の座に居座り、全世界で2,500万枚を売り上げるメガ・ヒットとなった。
B1「ビートに抱かれて」などはベース無しの、まるで前衛のような不思議なダンスミュージックだけれども、これがプリンスの最大のヒット曲となったのだから恐れ入る。正直わたしのような馬耳には、よくこれが世界中で売れたもんだとただただ感心するほかない。
アルバムの最後を飾るB4「パープル・レイン」では、プリンスが単なるエレクトロ・ファンクやダンス・ミュージック畑のアーティストではなく、規格外の才能を持ったロック・ミュージシャンでもあるということがロック・ファンにも認知された。
「パープル・レイン」は「パープル・ヘイズ」を想起させるタイトルだし、映画ではこの曲のときだけ白いボディのエレキギターに持ち替えて演奏される。やはりジミ・ヘンドリックスを意識しているのだろうと想像する。歌って踊れるジミ・ヘンドリックスである。
わたしがプリンスにハマった、という時期は実は一度もなかったが、なんだか聴いてる音楽すべてに飽きたなあと感じるときによく、プリンスのアルバムを聴いたものだった。彼の音楽にはいつになっても飽きずに聴ける、時空を超えたような新鮮さがある。
もしかするとわたしは、70歳も過ぎたころに、聴くものがもうどうにも無くなってしまって、あらためてプリンスのアルバムを順番に聴いていたりするのかもしれないなとも思う。
↓ 1984年のビルボード年間チャートでも1位に輝き、プリンスのシングルとしても最も売れた「ビートに抱かれて」。
↓ 当時はプリンスとしては異色だったメロディック・ロック風の「パープル・レイン」。全米2位の大ヒットとなり、プリンスを象徴する代表曲となった。
(Goro)