
Primal Scream
Higher Than the Sun (1991)
今でも憶えているけれども、当時の音楽誌のインタビューでプライマル・スクリームのフロントマン、ボビー・ギレスピーが新曲について訊かれ、「アナーキー・イン・ザ・U.K.以来のシングル!」と豪語したのが、この曲だった。
前作の2ndアルバムでストゥージズのようなガレージ・ロックをやっていた彼らだったので、われわれはもちろん最高のパンク・ロックを期待したものだったが、しかしリリースされたこの「ハイヤー・ザン・ザ・サン」のあまりの異形の姿にわれわれは大いに面喰らい、戸惑い、苦笑いしたり、視線を宙に彷徨わせたり、そっと席を外したり、滑って転んだりしたものだった。
あの、大いなる1991年の、最大の問題作だったと言っても過言ではなかった。
彼らがなにを目指してるのかもわからないし、ロックなのかなんなのかすらわからないこの曲を、評価する言葉も見つからなかった。
でも90年代後半に旋風を巻き起こしたレディオヘッド以降は、かなり変テコな異形のロックもあたりまえになった。今あらためて聴くと、そんなに変わった曲でもない、ちょっとキモかわいいぐらいのことだ。
それでもやはりこの独創性は凄かった。
好き嫌いはあるにしろ、あの1991年を象徴する楽曲のひとつであり、プライマルの数々の名曲の中でももっとも異形かつオリジナリティにあふれたものであることは間違いないだろう。
(Goro)