〈パワー・ポップ〉という用語は、1970年代の後半に生まれた。
ロックであることは間違いないけれどもハード・ロックではないし、パンクほどトガってもいない。ニュー・ウェイヴと言うほど変わったものでもないし、ましてやブルースでもカントリーでもないという、ジャンル分けに困ったバンドを〈パワー・ポップ〉と呼んだのが始まりだったという。
その特徴は、ハードなギターを中心としたパワフルなサウンド、ポップなメロディ、厚めのコーラス、そしてシンプルなビートだ。
その元祖は、60年代ブリティッシュ・ビートの正統的後継者であるバッドフィンガーやビッグ・スターであり、つまりパワー・ポップとは、パワフルなサウンドはザ・フーを、ポップなメロディはビートルズを継承した、王道ロックのことなのだ。
わたしは90年代にパワー・ポップが再評価され、新世代のパワー・ポップ・バンドがインディ・レーベルから続々と出て来た頃から聴くようになったが、そのハードなギターやキャッチーなメロディはもちろんだけれど、なんとなく肩の力の抜けた感じや、ロックだからと言って変にカッコつけたりトガってみせたりしない、自然体な感じがすごくいいなあと思ったものだった。もっと言うと、売れることよりも自分の好きなことをしていたいオタクっぽい感じも好きだった。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきパワー・ポップの10組10曲です。
Badfinger – No Matter What
ビートルズが設立したレーベル、アップル・レコードからデビューしたバンド、バッドフィンガーの、パワー・ポップの元祖とも評される代表曲。全英5位、全米8位の大ヒットとなった。
Big Star – Kizza Me
米メンフィス出身のバンド。70年代の半ばに活動し、結局ほとんど売れないまま解散してしまったけれども、90年代にパワー・ポップ・ブームが巻き起こると、元祖パワー・ポップ・バンドとして再評価された。
Cheap Trick – Surrender
1977年にデビューしたものの本国アメリカでは売れず、日本で最初に人気に火が付き、その後ライヴ盤『チープ・トリックat武道館』が本国アメリカに逆輸入されて大ヒットした。
ビートルズの濃い影響とハード・ロック風のスタイル、そしてスタイリッシュなユーモアとが見事に融合した稀有なバンドだった。
Jellyfish — The King is Half Undressed
90年代のパワー・ポップ大復活に先鞭を付けた米サンフランシスコのバンド、ジェリーフィッシュの1stシングル。
バンドの中心となった2人、アンディとロジャーは素晴らしい才能を持つソングライター・コンビであり、唯一無比の個性を持ったバンドだったが、しかしアルバムを2枚リリースしただけで惜しくも解散してしまった。
Teenage Fanclub – Star Sign
1990年にデビューしたスコットランド出身のバンド。バーズやニール・ヤング、ビッグ・スターなどの影響を感じる泣きメロとハードなギター・サウンドが特長で、この曲は彼らのブレイク作。新世代パワー・ポップの牽引役となった。
Matthew Sweet – Girlfriend
米ネブラスカ出身のシンガー・ソングライターで、このシングルがブレイクして名を広め、パワー・ポップ・ブームを加速させた。
このPVも日本のアニメ『コブラ』を使用しているが、他にも『うる星やつら』など日本のアニメに熱狂するオタク風の一面も好感度を高めていた。
The Posies – Solar Sister
米ワシントン州出身のバンドで、この曲が収録された3rdアルバム『フロスティング・オン・ザ・ビーター(Frosting on the Beater)』が高く評価され、オルタナ系ロックファンの間で一気に知られるようになった。哀愁漂うメロディはパワー・ポップのお手本。
Velvet Crush – Hold Me Up
米ロードアイランド出身のバンド。この曲は2ndアルバム『ティーンエイジ・シンフォニーズ・トゥ・ゴッド(Teenage Symphonies to God)』のオープニング・トラック。
これもまたパワー・ポップのお手本のような曲で、はじけるようなパワーと青春の甘酸っぱい香りがたまらない。
Weezer – Buddy Holly
グランジ・ブームも終息し、90年代ロックの勢いが失速しかけた頃にまさに救世主のようにデビューした、米ロサンゼルス出身のバンド。
この曲を収録した1stアルバムは全米16位と、大ヒットを記録した。90年代のパワー・ポップ・バンドの中でもダントツに売れたバンドだ。
The All-American Rejects – Dirty Little Secret
2002年にデビューした、米オクラホマ出身のバンド。この曲は全米9位の大ヒットとなり、その後もヒットを連発した。
エモ系の要素もあるハードなサウンドに、一度聴いただけで口づさみたくなるキャッチーなメロディが特長の、21世紀のパワー・ポップだ。
選んだ10曲を続けて聴けるYouTubeプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。
♪プレイリスト⇒はじめてのパワー・ポップ【必聴名曲10選】はこちら
ぜひお楽しみください。
さらにパワー・ポップを聴きたい方のために、続編の記事もあります。
↓
もっと聴きたいパワー・ポップ【10組10曲】
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(Goro)