Ozzy Osbourne
Crazy Train (1980)
アルコールやドラッグに溺れすぎてブラック・サバスを解雇されたオジー・オズボーンが1980年9月にリリースした初のソロアルバム、『ブリザード・オブ・オズ~血塗られた英雄伝説』に収録された彼の代表曲だ。
狂った殺人鬼が高笑いし、チェーンソーを振り回すようなギターのイントロはいかにもハード・ロックだが、しかしオジーが歌い出すメロディは、まるでビートルズぐらいポップだ。
“マッドマン”の異名を持ち、観客に生肉を投げつけたり、コウモリの死骸を噛みちぎって救急搬送されるなど狂ったパフォーマンスでもお馴染みのオジーだが、実はビートルズの熱狂的なファンであり、その根っこにはポップな音楽性が備わっているらしい。
オジーと40年以上連れ添っている妻のシャロンは、「結婚して以来、夫がビートルズを聴かなかった日は1日もないわ」と証言している。
そんなオジーの隠れた本領が発揮された、一度聴いただけで耳に残るポップな歌メロと、元クワイエット・ライオットのギタリスト、ランディ・ローズの凶暴かつ麗しい、奔放なギターとの競演がこの曲を独特の名曲にしている。
ヘヴィ・メタルとブリティッシュ・ポップが心地よい違和感を残したまま融合した、80年代のエンタメ系ハード・ロックの起源と言えるだろう。
鉄道模型の収集という意外な趣味も持っていたランディ・ローズはしかし、この2年後の1982年3月19日、ツアー中のフロリダで、遊覧飛行の小型飛行機に乗り、オジーが見ていた目の前で墜落し、帰らぬ人となった。まだ、たったの25歳だった。
オジーの悲しみは深く、ブラック・サバス時代よりもさらに酷くドラッグとアルコールに溺れ、インタビュアーなどがランディの名前を出しただけでもその場に泣き崩れたという。
(Goro)