ニューヨーク・ドールズ『ニューヨーク・ドールズ』(1973)【最強ロック名盤500】#198

ニューヨーク・ドールズ(紙ジャケット仕様)

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#198
New York Dolls
“New York Dolls” (1973)

レコード・デビュー前から、ドギツいメイクに女装でのライヴや、下品な言動や不遜な態度、ドラッグで初代ドラマーが死亡するなど、言わば「ヤバい奴ら」のイメージしかない彼らのアルバムの制作にあたって、そのプロデューサーの人選は当然ながら難航したという。

最終的に、ドールズとは音楽性がかけ離れているように思えるトッド・ラングレンが務めることになったのは、他の候補者がドールズの悪童ぶりに恐れをなしていたのに対し、彼はそうではなかったから、という理由だったという。

そんなトッド・ラングレンのプロデュース(ただ好きなようにやらせただけらしいが)によって完成したニューヨーク・ドールズの1stアルバム『ニューヨーク・ドールズ』は1973年7月にリリースされた。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 人格の危機
2 キスを求めて
3 ベトナムの落し児
4 ロンリー・プラネット・ボーイ
5 フランケンシュタイン

SIDE B

1 払い落とせ!
2 バッド・ガール
3 地下鉄
4 ピルズ (ボ・ディドリーのカバー)
5 プライベート・ワールド
6 ジェット・ボーイ

「人格の危機」「払い落とせ!(Trash)」「ジェット・ボーイ」の3曲はシングル・カットされ、彼らの代表曲としてよく知られている。他に「ロンリー・プラネット・ボーイ」なども印象的な曲だ。

ローリング・ストーンズとストゥージズの影響が濃く、当時流行のグラム・ロックもちょっとばかり羽織ってみせたような音楽性は、毒々しいガスを噴き上げる、狂った暴走マシンのようだ。

わたしはミック・ジャガーの廉価版みたいなデヴィッド・ヨハンセンのヴォーカルやソングライティングにはあまり魅力を感じない。ジェリー・ノーランのドラムも好きだが、やはりこのバンドはジョニー・サンダースの存在感が大きい。彼のなぜか人を惹きつける、アグレッシヴでありながらどこかキャッチーなギター・スタイルと、曲作りの才能によるところが大きい。もし彼がいなければ、それほど魅力的なバンドではなかっただろうと思う。

派手な女装での激しいライヴは、デヴィッド・ボウイやルー・リードも絶賛したという。アルバムは全米116位とセールス的には成功とは言えなかったが、ロックシーンに重大な影響を与えた名盤として永く聴き継がれた。この後に英米で巻き起こるパンク・ロック・ムーヴメントは、このニューヨーク・ドールズの登場から始まったと言っても過言ではないだろう。

いかにも退廃的で破滅的なバンドのイメージの通り、あまり長生きできそうな連中ではなかった。現在生き残っているのは74歳になるデヴィッド・ヨハンセンただひとりだ、

ジョニー・サンダースは1991年にニューオーリンズのホテルで、ヘロインのオーバードーズで死去した。38歳だった。彼のかなり酷いドラッグ癖は有名で、「最も早死にしそうなミュージシャン」の筆頭を常にキープしていたものだったが、この訃報を聞いたときは心底ガッカリしたものだった。そうは言いながらもキース・リチャーズみたいにしぶとく生き続けるだろうと思っていたのに、「案の定」みたいな死に方が本当に残念だった。

そしてドラムのジェリー・ノーランは長年の盟友ジョニーの死から9ヶ月後、脳卒中で倒れ、昏睡状態のまま数週間後に死去した。45歳だった。

ベースのアーサー・”キラー”・ケインは2004年7月に行われた再結成コンサートから22日後、インフルエンザにかかったと思いロサンゼルスの病院へ行くと白血病と診断され、わずか2時間後に急逝した。55歳だった。2005年の映画『ニューヨーク・ドール』は彼を主人公に据えたドキュメンタリーで、音楽映画というよりは人間ドラマとして、とても感動的な映画だった。

もうひとりのギタリスト、シルヴェイン・シルヴェインは、2019年に癌であることを公表、治療費を賄うためにクラウド・ファンディングを立ち上げ、資金を集めたが、2021年に69歳で死去した。

↓ アルバムのオープニング・トラックで代表曲のひとつ「人格の危機」。

↓ ラストを飾る「ジェット・ボーイ」も彼らの代表曲だ。わたしはこの曲がいちばん好きだな。

(Goro)

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