ニール・ヤング/ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド (1989)

Neil Young – Rockin' In The Free World – Vinyl (12", Stereo), 1989 [r2321929] | Discogs

【80年代ロックの快楽】
Neil Young
Rockin’ in the Free World (1989)

もしもロック好きの若者が「ニール・ヤングってよく知らないけど、良いんですか?」なんて訊いてきたら、黙ってこの曲を聴かせれば全戦全勝だと信じている。

ニール・ヤングの1980年代は、迷走の時代だった。

テクノ、ロカビリー、カントリー、シンセ・ロック、R&Bなど、アルバムごとにさまざまなスタイルを試したが、どれもこれも、レコード会社にとってもリスナーにとっても期待を裏切られるようなものばかりだった。

そして80年代も残りわずかとなった1989年10月に放ったアルバム『フリーダム』で、ニールはようやく本調子を取り戻したことをわれわれに示した。

充実した内容のアルバムだけれども、中でもアルバムのオープニングではアコースティック・バージョン、アルバムのラストではロック・バージョンで収録されている「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」は衝撃の名曲だった。

ロック好きならこの曲を聴いてなにも感じないなんてことはありえないだろう。

80年代最高のロック・アンセムに数えられるべきであり、ニール・ヤングの最高傑作のひとつだ。

その後も現在に至るまで、ライヴのクライマックスで演奏され、多くのカバーも生まれた。

街はあらゆる人種であふれている
足を引きずるように歩く人、道端で眠る人
道の先には警告の標識があり
多くの人はこう叫ぶ
いっそ死んだほうがましだ、と

赤ん坊を抱いて夜をさまよう女の子
ゴミ箱の横に赤ん坊を置き去りにして注射を射ちに行く
彼女はなすすべもない自分の人生を憎む
その子供もまた、学校には行かないだろう
決して恋をすることもなく、クールになることもないだろう

(written by Neil Young)

アメリカの影の部分を真っ直ぐ見つめ、やりきれない哀しみや怒りに駆られながら、ロックンロールが象徴する光と希望だけは決して失わない強い意志のようなものが漲る、魂が震えるようなナンバーだ。

ニールのいつになく激しく、熱いヴォーカルも最高だ。

(Goro)