⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
Neil Young & Crazy Horse
“Live Rust” (1979)
『ハーヴェスト』の成功でビッグ・アーティストに名を連ね、セレブの仲間入りを果たしたニール・ヤングはしかし、そこが自分の居場所ではないことにすぐに気づいた。レコード会社をはじめとする、彼の歌声から生まれる無限の富に期待を寄せて群がってくる人々を無視し、70年代をあてもなく彷徨った。
セックス・ピストルズの登場は、そんなニールを目覚めさせ、やるべきことをはっきりとわからせた。ニールは79年6月にリリースしたアルバム『ラスト・ネヴァー・スリープス』で、自身のキャリアにとって重要な、新しい扉を開いたのだ。
ニール・ヤングは「Rust Never Sleeps(錆は決して眠らない)」という言葉の意味について次のように語っている。
錆びつくことを嫌い、猛スピードで駆け抜けて燃え上がることを選んだニールは、クレイジー・ホースと共にラスト・ネヴァー・スリープス・ツアーに出た。本作はそのツアーの記録で、1979年11月に2枚組LPとしてリリースされた。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 シュガー・マウンテン
2 アイ・アム・ア・チャイルド
3 今がその時
4 アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ
5 マイ・マイ、ヘイ・ヘイ (アウト・オブ・ザ・ブルー)
SIDE B
1 アイ・キャン・リアリー・ラヴ
2 ローナー
3 ダメージ・ダン
4 溢れる愛
5 セダン・デリヴァリー
SIDE C
1 パウダーフィンガー
2 コルテス・ザ・キラー
3 シナモン・ガール
SIDE D
1 ライク・ア・ハリケーン
2 ヘイ・ヘイ、マイ・マイ (イントゥ・ザ・ブラック)
3 今宵その夜
SIDE A はニールひとりの弾き語り、SIDE Bからクレイジー・ホースとの爆裂ライヴとなる。
弾き語りの部分も親しみやすい曲が並び、引き込まれるが、なんと言ってもクライマックスはC1「パウダーフィンガー」から始まる怒涛の名曲6連発である。これらの曲はその後何年も、何十年も、ニール・ヤング&クレイジー・ホースによる最狂ライヴのハイライトとしてファンを熱狂させることになる。
このセット・リストが完成したこの時期、ニール・ヤングは米ロック界の頂点に立つライヴ・アクトになったのではなかったかとわたしは思う。ボブ・ディランでも、ブルース・スプリングスティーンでも、イーグルスでも敵わないほどの充実した楽曲を並べ、まさに燃え上がるような渾身のパフォーマンスを披露している。
また本作は、ニール・ヤングという多面的な音楽性を持つ稀代のアーティストの、70年代の集大成的なアルバムであり、そして収録された曲のほとんどがオリジナル・テイクを超えるベスト・テイクと言っても差し支えないほどの出来でもある。
なので、これからニール・ヤングを初めて聴くという人には、まず最初にとは言わないまでも、『グレイテスト・ヒッツ』や『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』や『ハーヴェスト』の次ぐらい、3番目か4番目ぐらいには聴いてほしいアルバムだ。実際わたしも3枚目か4枚目ぐらいにこのアルバムを聴いて、「よし、ニール・ヤングのアルバムを全部集めるぞ!」という決意をするに至ったのだった。まさかそれが一生仕事になるとは、そのときはまだ知らなかったのだけれども。
↓ 本作の詩情豊かな爆演によってニールの代表曲として定着した「ライク・ア・ハリケーン」。
↓ まさに燃え尽んばかりの、本作のクライマックス「ヘイ・ヘイ、マイ・マイ」。
(Goro)