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Massive Attack
“Blue Lines” (1991)
この当時流行した、ハウス・ミュージックやエレクトロ・ミュージックといった音楽には、わたしはあまり興味は惹かれなかった。
なにしろわたしは踊れないし、そもそも踊る場所なんてない退屈な地方都市に住んでいたからでもある。なのでああいった音楽はキラキラした都会の陽キャ様たちが踊るために、機械でテキトーな感じで作られたものだと思っていた。
このマッシヴ・アタックもきっとそういった類のものだろうと勝手に決めつけて、当時のわたしは完全スルーしていたのだ。
しかし、その後何年もしてから、本作が「”トリップ・ホップ”の最初の作品」と聞いて、「トリップ・ホップ」ってなんだ? という興味に惹かれ、聴いてみて、思っていたのとずいぶん違うことにようやく気づいたのだった。
本作は彼らの1stアルバムで、1991年4月に発表された。
【オリジナルCD収録曲】
2 ワン・ラヴ
3 ブルー・ラインズ
4 ビー・サンクフル・フォー・ホワット・ユーヴ・ゴット
5 ファイヴ・マン・アーミー
6 アンフィニッシュド・シンパシィ
7 デイドリーミング
8 レイトリィ
9 ヒム・オブ・ザ・ビッグ・ホウィール
なにしろ今まで聴いたことのあるエレクトロ・ミュージックやハウス・ミュージックとは全然違った。
まず、遅い。そして、暗い。さらに、重い。
これでは踊れないな、ということはすぐにわかった。踊るために作られたものではないのだ。
ソウルフルな歌声はムーディーだし、ヒップ・ホップ風のアプローチは攻撃的だ。
陽気ではなく、はしゃいだところもなく、むしろ陰鬱である。ダンス・ミュージックに思想や感情はいらないけれども、本作には思想も感情も色濃く出ていて、きっと踊るには邪魔だろう。
普通の、陽キャ向けのダンス・ミュージックとは真逆のものである。これは、わたしのような陰キャたち向きの、座ったまま、あるいは寝転んだままでも楽しめる、「脳内スロー・ダンス・ミュージック」である。
つまりは、これまでにない新しいエレクトロ・ミュージックだったため、「トリップ・ホップ」などという新しい名前が付けられたというわけだ。また、マッシヴ・アタックの出身地、英ブリストルにちなんで、「ブリストル・サウンド」とも呼ばれた。
ヒップ・ホップ、レゲエ、ソウルなどをミックスした音楽性で、全英13位のヒットとなった初期の代表曲「アンフィニッシュド・シンパシィ」などでは、サンプリング技術と生演奏を融合させた画期的な試みがされている。
本作は「新しいジャンルの発明」「音楽の地図を変えてしまった」などと絶賛された。本作もまた、1991年に生まれた、シーンに多大な影響を及ぼした1枚と言えるだろう。
↓ 不穏なイントロと、シャラ・ネルソンの美しく内省的な歌声が感動的な「セイフ・フロム・ハーム」。
↓ 全英13位まで上昇した、ストリングスも美しい「アンフィニッシュド・シンパシィ」。
(Goro)


