
Manic Street Preachers
A Design For Life (1996)
マニック・ストリート・プリーチャーズはデビュー時に、「1stアルバムで世界中で1位を獲って解散する!」などという大言壮語で話題になったが、結果は地元イギリスでも1位を取れず(13位)、解散も撤回、という結果で、音楽マスコミの嘲笑の中からスタートしたバンドだった。
でも日本の音楽雑誌は彼らにとても優しかったし、日本のロック好きの若者は彼らの来日も温かく、熱く迎えた。
しかし2ndアルバムはイギリスでも8位まで上昇し、そしてこの4枚目のアルバムはついに2位まで上昇した。彼らは徐々に本国でも人気を獲得し、90年代後半には英国を代表するロック・バンドとなったのである。
しかしちょうどこの頃、ギターと作詞を担当していたリッチー・エドワーズが精神を病み、アメリカ・ツアーへ向かう予定だった1995年2月1日、ロンドンのホテルで宿泊中に失踪、そのまま行方不明となってしまう。
バンドは解散も検討したが、リッチーの家族からの懇願もあり、三人で続けていくことにした。
そして、リッチー不在でリリースされた最初のシングルが、この「デザイン・フォー・ライフ」だった。
マニックスらしいドラマチックで大きなメロディが、ストリングスを導入した豪華なアレンジによってさらに強調されている。
労働者が酒場でひとりごとをつぶやいているみたいな歌詞が素晴らしい。
図書館が力を与えてくれて
仕事がおれたちを自由にした
汚れた顔のおれたちににも
尊厳や価値はあるだろう?
おれたちは愛なんて語ったりしない
ただ酔っぱらいたいだけなんだ
でも無駄遣いするわけにはいかない
人生設計があるから
(written by James Dean Bradfield, Sean Moore, Nicky Wire)
不在のリッチーに替わって、ベースのニッキー・ワイアーが作詞を担当した。
当時ブームになっていたブリット・ポップで描かれるような「酒を飲んで騒ぐ労働者階級」というステレオタイプのイメージに彼は違和感を抱いていた。
この曲では、労働者階級も知識や教養を渇望し、ストレスを発散しながらも人生設計を実現するために自制する思慮深い姿を描いている。
ああ、なんだか泣けてくる。
わたしも中卒のバカのくせに、十代の頃からずっと本を読み続けてきたものだ。知識や教養なんて何の役にも立たないような殺伐とした底辺職を転々としながらも、それでもこれを離してしまったらおしまいだと感じていた、人間らしく生きていくための唯一の命綱のように。
わたしは、マニックスではこの曲が一番好きだ。
この曲が幅広い支持を集め、マニックスでは初となる、英国シングル・チャート2位の大ヒットとなった。そして後には、単なるヒット曲という枠を超えて、労働者階級の立場に立ったアンセムとして広く愛されるようになっていったという。
(Goro)