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Living Colour
“Vivid” (1988)
リヴィング・カラーは、ギタリストのヴァーノン・リードを中心に、ニューヨークで結成された黒人4人のハード・ロック・バンドだ。
当時は、メンバー全員が黒人というハード・ロック・バンドはものすごくめずらしい存在だったので、それだけでも話題になったものだ。
ヴァーノン・リードはデビュー前から凄腕ギタリストとしてニューヨークの業界関係者にはよく知られていて、ミック・ジャガーの2ndソロ・アルバム『プリミティヴ・クール』に参加することになった。
するとミックが彼のバンドに興味を持ち、CBGBでのライヴを観に行って気に入り、彼らのデモ・テープのプロデュースを買って出た。そして、それがきっかけとなってリヴィング・カラーはEPICソニーと契約することになった。
当時は、ヒットした「カルト・オブ・パーソナリティ」の印象からか、「黒いツェッペリン」などと評されていたけれども、アルバム全体はハード・ロックのみならず、ファンク、ヒップ・ホップ、パンクなどの影響も受けたミクスチャー・ロックなので、どちらかと言えば「黒いレッチリ」のほうが近いように思う(この当時のレッチリはまだマイナーな存在だったが)。
本作はリヴィング・カラーの1stアルバムとして1988年5月にリリースされ、全米6位まで上昇する大ヒットとなった。
【オリジナルCD収録曲】
1 カルト・オブ・パーソナリティ(全米13位)
2 アイ・ウォント・トゥ・ノウ
3 ミドル・マン
4 デスペレイト・ピープル
5 オープン・レター
6 ファニー・ヴァイブ
7 メモリーズ・キャント・ウエイト
8 グラマー・ボーイズ(全米31位)
9 フェイヴァリット・カラー
10 フィッチ・ウェイ・トゥ・アメリカ
ソウルフルなヴォーカルに切れ味の凄いギター、ビンビンに躍動するベースにパワフルなドラムと、腕達者が揃った緊密なアンサンブルによるバラエティ豊かな楽曲で、最後まで飽きさせない。
シングル・カットされた「カルト・オブ・パーソナリティ」は全米13位のヒットとなり、グラミー賞の最優秀ハード・ロック・パフォーマンス賞を受賞した。
黒人だけのロック・バンドというだけでもすでに特異な存在だったが、音楽性もまた、当時のハード・ロックとは一線を画す、まだそんな言葉が流行する以前だったけれども「オルタナティヴ・ロック」が商業的成功を収めた最初のケースだったとも言える。
1990年にはローリング・ストーンズのワールド・ツアーでサポート・アクトを務めるなど幅広い活躍を見せ、その後のアルバムも高く評価されたが、しかしセールス的には伸び悩んだ。4枚目のアルバムをレコーディング中に、バンド内の一致した方向性が見出せず、制作を中止して1995年に解散した。
彼らが高い評価を得ていたにもかかわらず、彼らに続く黒人のロック・バンドが世に出て来ることがなかったのは何よりも寂しい。
今ではヒップ・ホップはセールスでロックを上回る存在になってしまった。
あえてロックをやろうなどと考える奇特な黒人は多くないのだろう。
↓ 全米13位のヒットとなった代表曲「カルト・オブ・パーソナリティ」。音楽には文句はないけれども、このダサい衣装だけは何とかならんかと思ったものだ。
↓ デビュー・シングルの「ミドル・マン」。
(Goro)