
⭐️⭐️⭐️⭐️
Julian Cope
“Peggy Suicide” (1991)
英国のカルト・アーティスト、ジュリアン・コープのことをわたしはよく知っているわけではないけれども、本作を初めて聴いた瞬間から、「こりゃ名盤だな」と思ったものだった。
ジュリアン・コープは、英リヴァプールのポスト・パンク・バンド、ザ・ティアドロップ・エクスプローズの中心人物として1979年にデビューし、人気を博したが、1983年からソロとして活動している。
80年代後半にはポップな作風で商業的な成功も得たが、それに飽き足らず、オルタナティヴ・ロック的なアプローチで挑んだのが、LP2枚組、全18曲75分の壮大な世界を作り上げた本作だ。
【オリジナルCD収録曲】
1 プリスティーン
2 ダブル・ヴェジテーション
3 イースト・イージー・ライダー
4 プロミスド・ランド
5 ハンギング・アウト・アンド・ハング・アップ・オン・ザ・ライン
6 セーフサーファー
7 イフ・ユー・ラヴド・ミー・アット・オール
8 ドライヴ・シー・セッド
9 ソルジャー・ブルー
10 ユー
11 ノット・レイヴィング・バット・ドラウニング
12 ヘッド
13 レパースキン
14 ビューティフル・ラヴ
15 ウエスタン・フロント1992 C.E.
16 ハング・アップ・アンド・ハンギング・アウト・トゥ・ドライ
17 アメリカン・ライト
18 ラスヴェガス・ベースメント
一聴しただけで「こりゃ名盤だな」と確信したというのは、ヒットしそうな名曲がいくつも並んでいるとかそういうことではなくて、確固とした世界が出来上がっているからだった。なので、その中から個別に楽曲を取り出してみても、あまりピンとこないかもしれない。もうそれは臓器のように、全体の一部として効果を発揮しているものだからだ。
なので、このアルバムの素晴らしさを説明するのはなかなか難しい。
ジュリアン・コープはこの作品を「地球という女性の視点から語られる黙示録的物語」と語っていて、アルバムタイトルの“Peggy Suicide”は「地球母神(Mother Earth)が人間の愚かさによって死に追いやられる」という寓意を含んでいるという。
と言われても、よくわからないのが人情である。
一貫した物語があるわけではないけれども、全体の空気感はコンセプト・アルバムに近く、音楽性が似ているわけではないけれども、なんとなくボウイの『ジギー・スターダスト』を想起させるようなものをわたしは感じた。
75分の長尺ではあるけれども、最初から最後まで、まったく飽きることなく聴き通すことができる、ジュリアン・コープの最高傑作と評価されている代表作だ。
↓ シングル・カットされた「イースト・イージー・ライダー」。後にスピリチュアライズドのリード・ギタリストとなるマイケル・ワッツが参加している。
↓ そのマイケル・ワッツのギターが活躍する「セーフサーファー」。
(Goro)