ジーザス・ジョーンズは、1989年にデビューした、英ロンドンのバンドだ。
80年代のロック、ハウス、テクノ、ヒップホップを融合させた彼らのサウンドは「デジタル・ロック」と呼ばれ、当時としては画期的だった。
今聴くと、これほど個性的なサウンドもない、とも言える。
わたしは80年代のニューウェイヴが行き着いた先に咲いた、80年代を象徴する花のように思える。花の命は短かったけれども。
まあ、ロックの流行なんてだいたいが、新鮮→ブーム→飽きた→新鮮→ブーム→飽きた、の繰り返しなので、いつかまたデジタル・ロックが「新鮮」枠に入る日が来たら、その元祖としてジーザス・ジョーンズの名前が挙がる日が来るかもしれない。もしかすると。
以下は、わたしが愛するジーザス・ジョーンズの至極の名曲ベスト5です。
Real, Real, Real
2ndアルバム『ダウト(Doubt)』からの最初のシングルで、いきなり全米チャートの4位に食い込む、大出世作(全英19位)。ここからジーザス・ジョーンズの、短いけど熱い快進撃が始まる。
確かな真実
それがわかると言うなら
教えてもらいたいもんだ
どうしたら本当のことがわかるのか(written by Mike Edwards 斉藤真紀子訳)
90年代に入って世界情勢も若者たちの意識も激変し、夢やまやかしではなく「リアル」を求める時代が始まった、まさに時代の空気そのもののような歌詞だ。
The Devil You Know
3rdアルバム『パーヴァース(Perverse)』からのシングルで、全英10位、米オルタナ・チャート1位。
物事は一筋縄じゃいかない
おれたちには自分の時間などありゃしないんだ
そこにいるのは悪魔だけ
隙あらば、つけこもうと狙っている(written by Mike Edwards 斉藤真紀子訳)
ジーザス・ジョーンズのサウンドは人工的だけど、マイク・エドワーズの歌詞はいつも真実だけを歌っていた。
Never Enough
1st『リキダイザー(Liquidizer)』からの、2ndシングル。全英42位。
ハッピーになりたいってわけだ
ハッピーになりたいんだろう
わからないのか
ハッピーなだけじゃ足りないってことが(written by Mike Edwards 斉藤真紀子訳)
曲はめちゃくちゃハッピーでノリノリでサイコーなんだけど、歌詞はこりゃまたお手厳しい。
International Bright Young Thing
2nd『ダウト』からのシングルで、全英7位、米オルタナ・チャート6位。
この曲は日本からイギリスへ帰る途中で書いたそうだ。
日本の若者たちの笑顔やエネルギーから、なにかを感じたのかもしれない。
世界中の希望に満ちた若者たち
おまえらが世界を揺るがす
世界中の明るい若者たち
世界を揺り動かせ(written by Mike Edwards 斉藤真紀子訳)
よーし、おれたちにまかせろ、なんてわたしも思ったものだった。
Right Here、Right Now
2nd『ダウト』からのシングルで、全米2位の大ヒットとなった、ジーザス・ジョーンズの代表曲。
ラジオで女が革命を語る
それも既成の事実として
ボブ・ディランが歌ってた時代
こんなことは夢だった
なあ、生きるっていいことだぜおれは生き、待ち続けた
ただこのためだけに、待ち続けてきた今、この場所
おれの居場所はここ以外にない
たった今、まさにこの場所で俺は
歴史の呪縛から世界が立ち上がるのを見ている(written by Mike Edwards 斉藤真紀子訳)
時代の空気に敏感だったマイク・エドワーズが、ベルリンの壁の崩壊、ソビエト連邦の崩壊と共産主義の敗北、独裁者たちが次々と失脚し、歴史と世界地図が塗り替えられた激動の時代に生きている実感を歌った、まさに時代を象徴する歌だ。
全米2位の大ヒットは、まさに世界中で若者たちが共感したからだろう。
わたしもそのひとりだった。
入門用にジーザス・ジョーンズのアルバムを最初に聴くなら、やはり2ndアルバム『ダウト(Doubt)』がお薦めだ。唯一無比のサウンドによる、時代を象徴する名盤だ。
(Goro)