「ザ・キラー」「ブロンドの爆弾」など過激な異名で呼ばれたジェリー・リー・ルイスは、ロックンロール界に最初に現れた破天荒キャラだった。
金髪を振り乱し、踊りながら、まるで叩き壊すようにピアノを弾き、狂ったようにシャウトする、ワイルドでエネルギッシュなパフォーマンスで人気を得た。彼のブギウギ・ピアノのスタイルは「パンピン・ピアノ」と呼ばれた。
しかし、私生活では13歳の少女と結婚していることが発覚し(州法では合法なので本人は悪いことをしている自覚はまったくなかった)、重婚の疑いもあることなどを含め(それが3度目の結婚であり、最初の結婚は彼が14歳の時だった)、スキャンダラスに報じられたことでイメージを悪くし、公演を予定していたイギリスから入国を拒否されたことなどをきっかけに、ブレイクからわずか1年で人気は凋落してしまった。
このあたりの事情はデニス・クエイドがジェリー・リーを演じた1989年の映画『グレート・ボールズ・オブ・ファイア』に詳しく描かれている。
スキャンダルの後、10年近く低迷したが、1968年にカントリー・ソングでヒットを放つと見事に復活を果たし、カントリー・シンガーとして1980年代までヒット曲を量産した。
そして1986年に創設された《ロックの殿堂》に、エルヴィス・プレスリーやチャック・ベリーなどと共に、最初の10人に彼は選ばれた。
2012年には77歳で7度目の結婚を果たし、ミシシッピ州の農場で家族と暮らした。そして2022年に、87歳の大往生でこの世を去った。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきジェリー・リー・ルイスの至極の名曲5選です。
Whole Lotta Shakin’ Goin’ On
1956年にエルヴィス・プレスリーやジョニー・キャッシュなども所属したメンフィスのレーベル、サン・レコードからデビューすると、この2ndシングルが全米3位と大ヒットし、一気にブレイクした。ロックンロール草創期の代表的な名曲のひとつだ。
Great Balls of Fire
全米2位の大ヒットとなり、彼の代名詞ともなっている代表曲。
女の子に夢中になると「ゾクゾクして、おかしくなって、でっかい火の玉みたいにぶっ飛んじまう」と歌う、彼ならたぶんそうなのだろうなと納得してしまう歌詞だ。
What’s Made Milwaukee Famous (Has Made a Loser Out of Me)
1968年にシングルとしてリリースしたカントリー・ソングで、米カントリー・チャート2位まで上昇する大ヒットとなった。
曲のタイトルは「ミルウォーキーを有名にしたものは」という意味で、これはシュリッツ・ビールのことなんだそうだ。
「もう時間も遅いし、彼女が待ってるから帰らなきゃいけない。でもついつい飲みすぎてしまうんだ。ミルウォーキーを有名にしたやつは、オレを阿呆にしてしまう」と自虐的に嘆く歌だ。
Middle Age Crazy
1977年のアルバム『カントリー・メモリーズ』からのシングルで、米カントリー・チャート4位のヒットとなった。
40歳になった男が、いろいろな肉体的な衰えについて危機感を感じる悲哀を歌った歌で、1980年にはこの曲の内容を元にコメディ映画も作られた。
わたしはこの抒情的で美しいアレンジの沁みるワルツが、彼のカントリー・ソングの中でも特に好きだ。
Rock and Roll
2006年にリリースしたアルバム『ラストマン・スタンディング』は、豪華なゲスト陣と共演したカバー・アルバムで、彼の全キャリアを通じて最も売れたアルバムとなった。
この曲はレッド・ツェッペリンの名曲で、共演しているのはジミー・ペイジだ。ジェリー・リーのスタイルに寄せたアレンジに、ぺイジが爆裂ギターでグルーヴをつくり出す。
当時71歳のルイスと当時62歳のペイジによる、ロックンロール真剣勝負に胸が熱くなる。
入門用にジェリー・リー・ルイスのアルバムを最初に聴くなら、もちろんベスト盤で充分なのだけど、ロックンロール時代とカントリー時代はレーベルが違うこともあって全キャリアを網羅したものはないかもしれませんね。
(Goro)