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James Carr
“You Got My Mind Messed Up” (1967)
その昔、ディープ・ソウル(サザン・ソウル)のファンの間では「オーティス・レディングとジェイムズ・カー、どっちをより高く評価するか」という命題は最大の難問だった、と聞いたことがある。
まあ好き好きだろうけれども、わたしは、好きな曲が多くあるのはオーティスのほうだけれども、歌声が好きなのはジェイムズ・カーのほうだ。
一般的な知名度は圧倒的にオーティスのほうが上だが、当時のコアなソウル・ファンの間では人気も実力も伯仲していたふたりだった。
本作はそんなジェイムズ・カーの代表作であり、ディープ・ソウルを代表する傑作であり、さらには「史上最高のソウル・アルバム」とも評されている名盤である。
実のところわたしがディープ・ソウルの沼にハマるきっかけとなったのがこのアルバムだったのだ。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 POURING WATER ON A DROWNING MAN
2 LOVE ATTACK
3 COMING BACK TO ME BABY (Mono)
4 I DON’T WANT TO BE HURT ANYMORE (Mono)
5 THAT’S WHAT I WANT TO KNOW
6 THESE AIN’T RAINDROPS
SIDE B
1 THE DARK END OF THE STREET
2 I’M GOING FOR MYSELF
3 LOVABLE GIRL
4 FORGETTING YOU
5 SHE’S BETTER THAN YOU (Mono)
6 YOU’VE GOT MY MIND MESSED UP
ジェイムズ・カーは1942年にミシシッピ州の牧師の家庭に生まれた。家族でメンフィスに移住すると、ジェイムズは教会で歌い始め、テーブルを作る工場で働きながら、ゴスペルグループの一員として活動した。
インディ系レーベルのゴールドワックスからデビューし、1966年にB6「ユー・ガット・マイ・マインド・メスト・アップ」が米R&Bチャートの7位まで上がるヒットとなり、ブレイクを果たした。
B1「ザ・ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート」は最もよく知られた彼の代表曲である。わたしにとっての1960年代のソウル・バラードのベスト3はオーティスの「この強き愛」、インプレッションズの「ピープル・ゲット・レディ」、そしてこの曲である。
他にもA2「ラヴ・アタック」やA4「アイ・ドント・ウォント・トゥー・ビー・ハート・エニイモア」などソウル・バラードの名曲が続き、バックのパワフルで粘っこい演奏も素晴らしい。オーティスのように泣き叫ぶような激情型ヴォーカルではないが、誠実な力強さと真摯な説得力は心を揺さぶる。
ジェイムズ・カーは高い評価にも関わらず全盛期にはたった2枚しかアルバムを残さなかった。
所属のレコード会社が倒産し、その後もいくつかレコード会社を渡り歩いたりしたものの、持病の鬱病に苦しめられたり、抗鬱剤の副作用などもあって、安定した活動ができなかったのだ。
79年の日本ツアー時も体調が悪く、ステージ上でフリーズしてしまうようなこともあったらしい。持病さえ無ければもっと多くの素晴らしい作品を遺してくれただろうにと思うと、本当に惜しい。
90年代には活動を再開し、アルバムも2枚発表したものの、やがて肺がんを患い、2001年にメンフィスの老人ホームで58歳で死去している。
↓ 米R&Bチャート10位のヒットとなったジェイムズ・カーの代表曲「ザ・ダーク・エンド・オブ・ザ・ストリート」。
↓ 米R&Bチャート21位となった情熱的なソウル・バラード「ラヴ・アタック」。
(Goro)